乙女的恋革命ラブレボ
花一匁 ―はないちもんめ― 20
「、ここの庭って風流あるよなー
なんかこういった和の景色を見ると日本!って思えない?」
「あー解る、イギリスにはこんな景色無いからな」
「こんな時にはデジカメ!!、一緒に撮ろう!」
「・・・保健医とは違った意味で用意周到だな」
何時の間にそんなもん持ってたんだ、と告げるにニヒルな笑みを返して
その日本独特の和を強調した庭を背景にして
の肩を抱き寄せるとレンズを自分の方に向ける
一回シャッターを切って画像を確認しながら他愛の無い雑談を繰り返して
他にも色々な場所で写真を撮った
それから部屋に戻ると既に他の三人は部屋に居て
部屋に脚を踏み入れると非難めいた保健医の視線が俺たち二人を貫いた
「ったくお前等、どっかに出掛けるかなら書置きの一つでもしておけっての!」
「すみませーん」
雅紀は謝るものの、顔がニコニコしていて反省の色が無い
そんな保健医とは対照的に本当に安心した表情で俺に抱きついてきた鷹士
「心配したんだぞ・・・?良かった、無事で
何かされなかったか?」
「鷹士さん・・・まるで俺が血に餓えた獣的発言ですよ」
「相変わらず心配性なんだな、の兄貴は」
鷹士の発言に多少苦笑いの雅紀、そしてそんな様子を少し綻んだ表情で見ている蓮
蓮はというとベランダのソファにゆったりと腰をかけて、完全に寛ぎモードで
目の前の机に何かの板を広げている
蓮の向かいには保健医
その見覚えのある板に小走りに駆け寄って
「蓮!チェスしてんのか!?懐かしいなー」
「なんだ、も出来るのか・・・今の勝負が終わったらどうだ?」
「ふっ・・・俺は強いぞ?」
「・・・そうか、今ほど暇はしなくて済みそうだな」
そんな蓮の容赦ない言葉にぐっと悔しそうな表情を見せる今の対戦者の保健医
滅多にやらねーんだからしょうーがねーだろ、とボヤきつつも
トン、と駒を進める
「チェック」
「うっ」
蓮によって呆気なく両断された保健医は胸ポケットから煙草を取り出して
ソファから腰を上げるとベランダの外に出て煙草を吸い始めた
その不機嫌そうな保健医の横顔を見て小さく笑うと、それをたまたま眼にした保健医が
「笑うな」と言う意を込めてジロリと俺を睨み付けた
保健医の座っていた席に腰を下ろして暫しチェスに身を投じる事にする
駒を初期位置に戻してさぁ始めるかという前に蓮がある提案をしてきた
「唯の勝負では重石面白くないな、何か簡単な賭けでもするか?」
「いいぜ、そっちの方が張り合い甲斐がある」
「そうだな・・・ 『 負けたほうが今日一日勝ったほうの僕 』 なんてのはどうだ?」
「「僕!?」」
横で俺と蓮の会話を聞いていた鷹士と雅紀が一緒に声を上げる
「ああ、一般的な賭けだな、もっと面白い内容にすればいいのに」
俺のあっけらかんとした返答に更に外野二人は声を上げる
しかしその声を同じくスルーしているらしい蓮も「たとえばどんな?」と続きを促してきた
「例えば? 『 勝ったほうが負けた方の身体を好きな時に好きにできる 』 ・・・とか
ちなみに期間は無期限、しかもいつでも何回でもこの権限は執行可能だ」
俺の言葉に鷹士が「体を好きにできるってどういう意味だ!!」などと叫んでいるが聞こえないフリ
ニヤリと蓮を見ながら不敵に笑むと
俺の表情を見た蓮は同じく俺にふわりを笑みを返しながら
「好きな時に・・・っていうのが妙にひっかかるな」
「おやおや、流石優等生、良い所に食いついてくる」
「、お前の考えていることがなんとなく解る気がするんだが」
「へぇ?そりゃご愁傷様」
「・・・」
「・・・」
俺と蓮の間に冷たい空気が漂う
互いにニコニコとした笑みを見せているのになんだか宿命の対決のような雰囲気に
鷹士と雅紀は一歩引いたところからその様子を窺った
俺はチェスの駒を素早く手にして
カッと覇気を含んだ眼差しで蓮を睨みつけつつ、その上で笑みを絶やさないように一手を突き出した
「先行で行かせてもらうぜ、一ノ瀬センパイ?」
「ふん・・・返り討ちにしてやる」
ピリピリと空気が軋み始めてそれでも笑みを絶やさない俺と蓮
雅紀はその異様な光景をデジカメに押さえるが
そのシャッター音をもかき消すチェスの音が部屋に響いていた
この勝負
絶対に勝って学校が始まったと同時に何度でも執行してやる
カッカッ
とチェスの音が響いて数十分
普通はトンと柔らかい音がするはずなのだが二人の指先にこれでもかと力が込められているのか
板に響く音は激しく鋭い
いつの間にか室内の明かりが灯っていてベランダのカーテンは布かれていた
必死な様子の俺と蓮を見守りつつ備え付けのテレビをつけた状態で雑談する他三名
カッ
「賭けの内容は良く解った、金品関係の賭けだったら止めさせようかと思ったが
あの二人があそこまで必死になってると面白いな」
カッ
「先生、そんなに悠長に眺めてていいんですか!?
俺の大事な弟が一ノ瀬君に好きにされるのを見ているだけなんて先生として失格ですよ!?」
「いや、それは明らかにの私情が混ざってるだろうが
それにそんなにやましい意味じゃないと思うぞ?」
カッ
「くっ・・・」
そんな会話をしていた保健医と鷹士は蓮のちょっとした声を耳にして此方に顔を向ける
戦局からどんどん苦しい立場に追いやられている蓮は苦い表情を見せて
必死に俺の陣を崩そうとしてくるが
その最後の一手に俺は勝利を確信した
「 チ ェ ッ ク メ イ ト 」
俺の駒送りにはっとしたのもつかの間
蓮のキングを指先で救い上げてニヤリと勝利の微笑み
ふふふ、伊達に向こうのチェス協議会会長と手合ってねーっての、と1人ほくそえんで
やはり人脈は強い
こういう時に役に立つのだから
「・・・強いな」
「さぁて、さっきの条件は蓮が卒業するまで学校で大いに活用させてもらおうかな」
「仕方が無いな、負けは負けだ、条件を飲もう」
「蓮も結構強かったな、また手合わせしてくれよ」
「・・・気が向いたらな」
俺の出した条件を思い返したのか、コメカミに指先を当てて深くため息をつく蓮
よほど俺の思惑が解っているのか
口では負けを認めているものの、恨みがましい視線を寄こしてきた
そう、学校では時にバリケードとして、時にハリボテとして利用させてもらうのだ
ふふふ、と含み笑いをして席を立つと雅紀に声をかける
「雅紀、風呂行こうぜ、チェスで結構疲れたし」
「待ってました!じゃあちょっとと風呂に浸かってくるね〜」
俺の分のタオルも用意していたのか既に準備万端の状態で俺にタオルを渡す雅紀
鷹士に軽く手を振って、俺は雅紀と風呂に向かった
「ここの温泉って二十種類以上あるんだってさ、やっぱまずは露天風呂だよな!」
「悪ぃな雅紀、俺につき合わせちまって」
「だっての体の秘密知ってるの俺だけじゃん
チェスで待たされた時間は俺の背中を流してくれるってことでチャラでどう?」
「オッケー」
「あぁあ!!携帯が圏外になってる!?
ど、どうりでヒトミから連絡が無いはずだ・・・!」
が華原くんと風呂に行ってからすぐにここの電波状況に気が付いて
先生と一ノ瀬君に言付けて旅館内の公衆電話に急いだ
旅館の出入り口に近い所で公衆電話を見つけて
持っていたテレホンカードを差し込んで番号を押す
家にかけるとそう待たずして妹が電話に出た
『 はい、です 』
「ヒトミか?どうだそっちは、変わったことないか?」
『 お兄ちゃん!!?ちょっ・・・なんで今日一日電話が繋がらなかったのよ!! 』
ヒトミは俺だと解った途端に声を荒げる
その変わりように何かあったのだと察知してヒトミに問いかければ
『 大至急の耳に入れておきたいことがあったんだけど・・・
は?今話できないの? 』
「ああ・・・なら華原くんと風呂に行ってるぞ?何かあったのか?」
そんな時、玄関のガラスの外の旅館の駐車場が眼に入って
そこに見覚えのある車が停車していた
(あの白のワゴン車は・・・)
外は既に真っ暗で、旅館の玄関灯でぼんやりとだが
行きがけに見かけたあの白いワゴン車によく似ている
その車を視界に捉えながらヒトミの言葉に耳を傾けた
『 どうもうちのマンションの近くをのファンがうろついてるらしくて・・・
そのファンの男に颯大君が襲われたらしいの 』
「何!?颯大君は大丈夫なのか!?」
『 う、うん、颯大君が言うにはそのファン、結構危ないらしくて
普段からのこと追い掛け回してるかもしれないって・・・の身に着けてるものとか
持ってるものとかに詳しいみたいで颯大くんもにもらったネックレスを盗られそうになったんだって 』
「そうなのか!?・・・それで?その危ない男とやらの顔とか見たのか?」
『 フードを深く被ってて見えなかったらしいんだけど・・・さっき颯大くんと剣之助くんが家にきて
今日に限ってその男の姿が見当たらないらしいの、それで確認したくて電話をしたのに
肝心のお兄ちゃんにも繋がらないし・・・ 』
「わ、悪い、まさかここの電波状況が悪いとは思いもしなくて・・・」
『 それで確認しておきたいんだけどそっちは大丈夫?
怪しい奴とか見つけたら用心しないとダメだよ!? 』
「・・・今のところ皆楽しんでるけど・・・」
チラリと玄関の外に止まっているワゴン車に眼を向ける
思い過ごしであって欲しい
何事も起こらなければいいのだが、と思うが
その想いは突然旅館内に聞こえた声に打ち砕かれた