乙女的恋革命ラブレボ



 ―はないちもんめ― 22









俺が一緒に付いていれば
一緒に居れば華原くんにも怪我をさせるようなことにはならなかったし
を薄汚い奴らに触らせるような事だってしなかった

なのに

なのに



「なんだよあのさっきの抱擁は〜!
俺はいっつもいっつも俺とヒトミにしかしないと思ってたのに酷いじゃないかぁ〜〜〜〜!!!」

「・・・結局そこに戻ってくるらしいな」



鷹士の言葉に冷静に突っ込む保健医
食後、保健医と鷹士には酒が用意された
保健医もちびちび飲んではいたが鷹士ほどハイペースでは無かった為
まだまだ酔う、という状況には程遠い
俺の隣で食事をしていた鷹士は既に酔っ払っていて
俺をガシリとつかんだまま放そうとしない

・・・全く・・・恥かしい身内だ

そう思いつつも振りほどかないのは
きっと物凄く心配させてしまったと理解しているからで
さっきまで散々「の身に何かあったら俺は生きていけない」とか
が居ないと兄ちゃんは絶対悲しい」だとか喚いていたのだ
酒が入った今ではきっとそれが鷹士の本心で、思っていた事なのだろうと思う

学生である俺と雅紀、蓮は飲めないが
無礼講と言うことで一杯だけ保健医に許可が貰えていたりする


ああ

そういえば俺と雅紀は

まだ風呂に入ってない


粗方食事が終わって俺は風呂に向かおうとしたのだが案の定鷹士に止められてしまう



「ダァメだ!!また何かあったらどうするつもりだぁ!!
・・・いかん、ダメだぞぉ・・・を1人になんて・・・ひっく、絶対、ダメだぁ!!!」



完全に出来上がっている鷹士
呆れた眼でその様子を見る保健医の頬も僅かに赤みが差している
蓮は我関せずといった態度でベランダ側のソファで読書を始める始末
雅紀は怪我の為、今日一日は保健医に風呂に入ることを止められてしまった
でも明日には入れるらしい



「どうしても行くと言うなら兄ちゃんもついて行ってやるからな!!」

「いや・・・今はSPが付いてるから大丈夫だと思」

「ダメだ!!PKだかKOだか知らないが
そんな信用できない奴らに大事なを任せられるかぁ!!」



ぐゎし!っと腰にしがみ付いて離れない鷹士
酔っ払いの馬鹿力は半端ではないのかミシっと軋む腰



「わ・・・解った、解ったって、でも鷹士は酒が入ってるから付いてくるだけだからな?」



そんな俺の妥協案にピタリと動きを止めた鷹士は真っ赤な顔を俺に向けて
「わかった・・・」とボソリと答えてフラつく脚で立ち上がる



「・・・大丈夫か?酔っ払いなんか連れてくと余計疲れるぞ?」

「SPが付いてるから100%平気だよ、鷹士もついて行けば気が済むみたいだしな」



フラついて俺にもたれかかっている鷹士を支えながら苦笑いで答える

(あー甘い、甘すぎるぞ俺・・・)

この憎めない鷹士の性格に小さくため息をついて風呂に向かった
ほぼ担いでいる状態の鷹士を連れて廊下を歩いていると何時の間に後ろに居たのか
Jが数歩離れた後ろから付いてきてくれていた
これならもぅ安心だろう
そう思いつつ露天風呂に向かって男湯に入ると
完全に半分眠っている状態の鷹士を脱衣所の長椅子に横たえて
誰の気配も無い事から多分ここには俺と鷹士と男湯の外で控えているJしか居ないようだ

着ていた服を脱ごうとロッカーを開けてチラリと後ろで眠っている鷹士を見やる
この様子なら俺の背中の傷も見られる事はないし
万一見られたとしても記憶にも残っていないだろうと判断して服を脱ぐと1人、露天風呂の扉を開けた













ふ、と
冷たい風が熱い顔全体を撫でた

(・・・気持ち良い・・・)

その冷たい風をボンヤリとした意識の中で受けて
うっすらと視界が白くなった瞬間、視界に入ってきたのは板張りの、清潔感溢れる天井と蛍光灯
どうやらどこかに横になっているらしい
微かに風に混ざって硫黄の香りがしてきて、ここは何処なのだろうかとぼやけた思考の中で考える
隣に人の気配を感じて僅かに首を傾ければ次に視界に入ってきたのは



痛々しい傷跡



その傷を見て僅かに眼を見開く



これは


誰の背中だ?



その背中は浴衣に覆い隠されて、見えなくなる
俺の様子に気が付いたのか、振り向いた男は僅かばかり驚いた表情を見せた
俺の顔を覗き込むように顔を近づけてきて
心配そうに眉を顰める



「鷹士?大丈夫か?意識、ハッキリしてるか?」



その問いかけに
何故か答えてはいけないような気がして、俺はわざと視線を彷徨わせる



「まだ酔いは冷めてない・・・よな」



安堵したようなその言葉を耳にして、余計に口を開くことが出来なくなる
目の前の表情は眉を顰めていた力をなくして無防備に笑みを浮かべている
風呂から上がったばかりなのか、からは良い香りが漂っている
は一端俺から顔を離すとロッカーから見覚えのあるボトルを取り出して
そのボトルの中身を少量だけ首筋、耳の後ろにつけている

(あの香水・・・)

香水の匂いが温泉の香りと混ざって絶妙に良い香りを引き出している
少しだけ水を含んでいる綺麗な茶髪を揺らして俺に振り返る
我が弟ながらやはり綺麗で、可愛くて・・・愛しい
気が付けばに手を伸ばしていてそんな俺の行動に答えるように
は俺のすぐ傍で膝をついて俺を覗き込んだ



は・・・綺麗だなぁ・・・」

「当然、鷹士もたまには鏡、見ろよ?」



俺と同じくらい綺麗なんだからさ、と告げたは本当に嬉しそうに表情を変えて
頬に触れた俺の指先に自分から手を重ねてきた
冷えた風が俺との間に流れて
だんだんと体温をなくしていくのが頬の温度で解って
酒で上がった体温をに分けるように、が湯冷めしないように
その背中に手を回して引き寄せた

ちょっと悪戯心でまだ酔っ払っているフリ



・・・湯冷め・・・するぞぉ〜」

「へいへい、鷹士もはやく布団で寝たいだろ、後は部屋に帰るだけだからもうちょっと辛抱して・・・?」



そういって抱き寄せた俺から離れようとしたを離さないように腕に力を込める
も俺の腕に力が入ったのが解ったのか、動きを止めて
至近距離で俺の眼と視線を合わせる



「鷹士?」

「・・・キスしてくれよぉ〜」

「はぁ!?・・・あー、ああ、さっきも部屋で駄々捏ねてたアレね」



俺の言葉に驚いたは直に何かに思い当たったのか、呆れた表情で
「仕方ないなー全く」と言いながら両頬にキスをしてきた
そして抱擁
これはイギリスの親しいもの同士が交わす挨拶で
長くイギリスに居たはきっと沢山の人とこの挨拶をしているんだと思うとちょっと・・・



いや、結構・・・



いやいや、
かなり悔しいかもしれない



さっきのジェイとかいうSPにがしていた挨拶を思い出して
俺はアイツに負けじと両頬のキスを終えて顔を離そうとしたの後頭部を押さえ込むと
ゆっくりと顔を近づけて何事かと眼を瞬いているの唇に優しく触れた



「!」



触れた瞬間の肩が震える
しかし拒むような様子は無くて、俺は更にその柔らかい唇にキスを繰り返す
背中の傷の事を知りたい
そう思っていたからか、無意識に背中に手を回していた



「た、鷹士・・・?」



触れるだけのキスを数回繰り返して顔を離せばまた、心配そうに俺を見るの瞳とかち合う
俺はの両頬を両手で包み込んで
うっとりと見惚れるように呟いていた

また、睡魔が俺を襲う

ふわふわして、気持ちがいい

甘い匂いが、心地いい



は・・・綺麗だ・・・」

「・・・鷹士?」

「綺麗で、可愛いくて・・・」

「・・・」

「眼に入れても痛くないし・・・どんなに抱きしめても足りない・・・」

「・・・鷹士・・・大丈夫か・・・?」

「・・・・・・」



ペチペチと軽く俺の頬を叩く

どんどんの顔が見えなくなる

最後に頬を優しく撫でてくれた感触を最後に、俺はまた暗い闇に意識を沈めていった