乙女的恋革命ラブレボ



 ―はないちもんめ― 27









「・・・はぁ?」



SPがついてからというもの、取り巻きも上手く遠ざける事が出来ているらしく
最近滅多に来なくなっていた人物が顔を出した

暫く振りに姿を見せたその人物は

なんの前置きもなくぶしつけな質問をしてきた



「だからさぁ・・・保健医は恋愛したことあんのかって聞いてんだよ」



この世で俺のことを保健医を呼ぶのは彼ぐらいのことで
私的な事情らしく
いつもは後ろに控えているSPのジェイとか言う奴も今は廊下の曇りガラスの向こうだ

外は暑いのにご苦労なこって

誰にも聞かれたくないらしく、保健室の扉に鍵をかけただけでは飽き足らず
最初に入ってきた時に俺が吸っていたタバコをさっと取り上げて煙を窓から逃がして
全箇所空いていた窓を閉めると鍵をかけてカーテンまで布く始末
お陰で外の風景も全く見えない

「それじゃあ部屋が暑いだろ」と告げれば

俺の許可無くエアコンの電源を入れて今では夏独特の涼しい空間に成り代わっていた
季節は七月半ばだとは言え、まだじめじめしていて外の空気のほうが好ましいというのに



「・・・授業中に来たかと思えばイキナリ色ボケか?
ったく、これだからマセガキは・・・」



午前中の授業中だと思われる時間帯に突然姿を見せたのだからそりゃ何事かと身構えたのだが
密室状態にした上、まだ不安らしいは声を潜めて俺の目の前でボソボソと話す



「バカヤロ!聞かれたらマズいからこうして!授業中に!
わざわざ保健医の所に訊ねてきてるんだろうが!!」

「そういう個人的事情なら身内で済ませろ身内で」

「・・・鷹士に恋愛相談をしろっていうのか」

「・・・いや、苦労を察するよ」



一瞬俺が考えた想像上ではは尋常でない行動をとっていた
以後、何度リプレイしてもそれは変わらないため
ため息を吐きつつポンポンとの肩に手を置く
そらみろ、といわんばかりの非難めいたの視線が俺を刺して



「で?この俺に恋愛経験が無いとでも思ってんのか?」

「もしそうだったら大スクープだろ、その歳で童貞とか最悪だ」

「・・・鋭く痛いことを言ってくれるなお前は
まぁ勿論経験もあるが・・・なんでまたそんな質問をしてきたんだ?」

「・・・」



言い辛そうに口篭って視線を斜め下に彷徨わせる
・・・こんな表情で悩んでいるを見るとどこか不愉快に感じてしまうのだが
とりあえずから話し出すのを待つことにした

暫くして俯いたままのが口にしたのは



「・・・男、好きになったことあるか?」



そんな発言に見事に全てが凍りついた
しかしそれも一瞬で、俺は即座に返答を返す



「・・・い、いや・・・無い」

「じゃあ男に告られたことは?」

「ねーよ、このオレ様にあるわけねーだろ」

「・・・じゃ、男とキスしたこともあるわけねーか・・・」

「・・・」



いや、それはあるぞ
と、言おうと思ったのだがその相手が目の前の人物なのだから言うのに戸惑ってしまう
しかし突然どうしたと言うのだろうか



「・・・男に告白でもされたのか

「んなもん昔っから何度もあるから慣れてる」

「・・・じゃあ男にキスされたとか?お前オレともキスしてんじゃねーか」

「そういう軽い意味でのキスじゃねーんだよ!!・・・ぁ・・・」



言ってしまって「しまった」と言う表情を見せた
なるほど、正真正銘のキスを経験して戸惑っているらしい
しかも話から察するに相手は男
そこで思い当たったオレは思わず身を乗り出していた



「まさかお前!誰かに襲われてとか抜かすんじゃねーだろうな!?」

「ち、違う違う!!初めてそういうキスされてどうすればいいのかわかんねーだけで!!」

「・・・は?」

「・・・う・・・じ、自分でも色々考えたんだけど、こういった経験するのは初めてだし・・・
上手くかわす方法なんて知らねぇし・・・あの時はわけわかんなくてされるがまま状態だったから
・・・なんか誤解させてたら悪いと思うんだけど、ダチだから傷つけんの嫌だし・・・」

「いや、待て、順をおって話せ」



普段は平気でオレにもキスを仕掛けるほど手馴れた雰囲気があったと言うのに
どうやら軽い気持ちでのキスに慣れきっていて
気持ちの篭ったキスを受けるのにはてんで免疫がないらしい
おかしな所で純粋なもんだ、と意外に思ってしまった

というか既に相手が男であるということを全く問題視していない所には
やはり幼い頃からそういった関係には広い国で育っただけはある

双子といってもやはり一番の違いは育った環境の違いだ

今回オレに相談を持ちかけてきた辺り、そういった情事に詳しいと踏んでのことだろう
目上ならの兄貴も居るだろうが、あいつにこんな話しを持ちかければ
100%と言っていいほどマトモな回答も得られないのは目に見えている



の話によれば三週間ほど前にある人物に熱烈なキスを受けて

しかし話の内容ではハッキリと告白したわけでも
思いを伝えているわけでもない

その後その人物のアクションも無いことから

その相手に断りの言葉を伝えるのは早すぎる決断だ、とに告げた
それで一応納得したらしいまでは良かったのだが



「なぁ保健医、今度またそんな事があったら
どうやってかわせば自然に見えるのか教えてくれないか?」

「・・・ん?オレの大人の会話術を習得したいってか?」



の純粋な態度にニヤリと口元を歪ませたオレは
目の前に座っていたの瞳をじっと見つめて
意図的に座っている椅子をギシリと軋ませる
オレの行動を瞬時に見切ったらしいは呆れた表情を見せて



「・・・やっぱ遠慮しておく、どうせ保健医相手でも軽い意味でしか取れそうに無い」



ごもっともな意見だ
逃げ方もヒトミそっくりだがやはり違うところは


『 一言多い所 』


「やっぱ遠慮しておく」だけで退室すればいいものを
わざわざオレの神経を逆撫でするようなことを言う所は似ても似つかないらしい
事実、今までオレはその一言でにつっかかっていたのだから

オレの目の前の丸い椅子から立ち上がって
保健室の出入り口に向かおうとしているの後姿に静かに
それでも確実な素早さで近づいて後ろから抱きすくめる

(ったく、オレも男相手になにやってるんだか・・・)

そうは思うものの、どうやらの発言は俺のプライドが許さないらしい
とはいえ俺も一応教職という立場だ
少し脅かすつもりで相手してやればこいつも懲りるだろう、と抱きしめた腕に力を込める



「軽い意味かどうか・・・確かめてみるか?」



わざと耳元で囁いてやれば

何故かため息が返された



「保健医のそういう軟派でわざとらしい言動さぁ、ぶちゃけた話 萎 え る 」

「・・・」


萎  え  る  と  か  言  う  な  っ  つ  ー  の

のキツーイ一言に密かに怒りのボルテージが上がりつつも
以前の不意打ちのキスでも戸惑っていたのは俺の方だと思い出して

たかが男されど男

やられっぱなしでは黙ってられない
こうなったら泣いてごめんなさいを言うまで教育的指導をしてやる、と
その軽いととられている軟派な態度でに目にものを見せてやることに決めた

まず手始めにを後ろから抱きすくめたまま
立ち止まっている隣の壁に運良くあった部屋の電気をパチパチと切っていく

全箇所カーテンで閉ざされた部屋は思いのほか暗くなって
しかしそんな行動に動揺も変化も見せないに片方の眉がピクリとつり上がった
(こいつ・・・)
後ろから抱きすくめているので表情は見えないのだが



「んで?次はどうすんだよわかちゅきてんてー?」



完全に遊んでいるような口調に
これは絶対お仕置きが必要だ、と思い直して
豪快な動作でを抱き上げるとズカズカとベッドに向かう

しかも抱き上げた瞬間「やっほぅ」と余裕綽々で放たれる声



( もう泣いても知らんぞ )



大人をからかうとどんな目に遭わせられるか思い知らせてやる、と
半ば意地の張り合いのような状況になりつつもそれを諌める第三者は



俺たちの周りにはいなかった








ダメな大人の手本(笑
初めて熱烈なキスをした犯人は言うまでもなく橘剣之助だったり