乙女的恋革命ラブレボ



 ―はないちもんめ― 29









本当は抱くつもりだった
止めるつもりも毛頭無かった

それでもあの時の体が異常に冷たくなってきていることに気がついて

自分の行動にブレーキがかかったんだ

があることを言っていたのを思い出す



『 Jが肉体的ボディーガードでKが精神的ボディーガード 』



以前にもファンに追いかけられ過ぎてさほど時も経たなかったのに
たった一週間ほどで心身の疲労で倒れたことがある
もしや精神面で何か問題をかかえているのではないだろうか
そう思うと、どうしてもそれ以上に触れることが出来なかった


まだ知る必要がある

歩み寄る必要がある


を完全に俺の腕の中におさめる為に




自覚した




俺はを好きになったらしい













「・・・はぁ・・・」



この間の出来事を思い出して無意識にため息が口をついて出る
目の前のホットココアに差し込んでいるそれ専用のスプーンでカチャカチャと中身をかき混ぜて
しかし飲む事は無くカップの中で混ざり合って渦をつくる模様に視線を落としながら
テーブルに頬杖をついて、またため息を零す

リビングの低いテーブルは透明な硝子仕様でテーブルの下の光景はぼやけて映っていた
俺が今腰を下ろしているのはふわふわと柔らかい感触の絨毯
普段は台所付近の適当な所に座っているものだから
学校から帰ってきた妹のヒトミは不思議そうに訊ねてきた



「ただいまぁ、なんだか珍しいね、リビングに居るなんて」



殆どダイニングでしか寛いだトコ見たこと無いのに、と
付け加えて甲斐甲斐しく俺を見るヒトミに視線を合わせることなく
「おかえり」、と呟く様に答えて

それと同時にガチャリ、と背後で玄関が開く様な音が聞こえたがそんなささいな音は
今の俺の脳味噌まで届く事無く、雑音として処理された
俺の軽薄な反応に疑問を持ったらしいヒトミは俺の横に座り込んで顔を覗き込んでくる



「どうしたの?ため息ばっかりついて、何か嫌な事でもあった?」

「・・・嫌な事って言うか・・・ややこしいことと言うか・・・」

「・・・私で良ければ相談に乗るよ?」

「うん・・・ヒトミ」

「ん?」

「ヒトミは日本で育ったから多分価値観とか違うと思うけどさ
男同士の恋愛ってどう思う」

「・・・え?」



今脳内を占めているのは実を言うと保健医と剣之助と鷹士だったりする
剣之助はあのキス以来まるで避けるような行動を取っているし
そんな行動を取られてしまえば茶化して終わることも出来ずに
あの時の出来事をどう処理すればいいのか悩むというものだ
それを保健医にそれとなく相談してみればわけのわからん意地の張り合いに発展するし
その所為で剣之助と同じ様なキスは受けるし

鷹士は鷹士で毎度言葉が危ういし

・・・

それでも一番淡白で、一番危険なのは鷹士だと思えてしまうのは何故なのか

そこまで考えてまたも無意識にはぁ、とため息をついてしまう
俺の様子を暫し見ていたヒトミは茶化す事無く、真剣に答えてくれた



「・・・恋愛なんて人それぞれだし・・・大体好きになったら仕方ないよね
いやな目で見る人も居るかもしれないけど、私はそういうの差別したりはしないよ
それにさ、性別超えるってだけでも十分素敵な恋愛だと思うよ?」



うーん、流石俺の双子にして妹
生活環境が違っても遺伝子配列に間違いはないらしい

それにしても七月に入ってからヒトミ、本格的に痩せてきたな・・・

その返答に柔らかい笑みを作ってヒトミを見ると
ヒトミは戸惑ったように顔を紅く染めて



「・・・もー、その顔禁止」

「慣れろよ、ヒトミが痩せたら一緒にモデルデビューするんだから」

「え、その既に決定してます的な言い方、私の意志無視?」

「痩せたら絶対今以上に俺とうりふたつなんだからマスコミが黙ってないっての」

「えぇ〜・・・ ・・・でもと一緒だったら別にいいかなぁ・・・とか思ったり」

「ん〜やっぱり可愛いなヒトミは!」



コロコロと表情を変えるヒトミはまさに魅力的だ
思わず抱きついてしまってそのふくよかな弾力に暫し癒しを求める
ヒトミも最初は慌てたものの最終的にはぽんぽんと俺の背中を軽く撫でて
俺と同じ様に抱擁してくれた

(あ〜・・・なんか幸せ・・・)

ヒトミが傍にいると安心できるというかなんというか

双子はお互いが半身のような感覚を持っているようで
または遺伝子レベルの相互作用でも起こっているような感覚さえ覚える
抱きついたまま暫しその状態をキープしているとヒトミが躊躇いがちに聞いてきた



、もしかして・・・その・・・誰か気になる人でもいるの?」

「・・・なんつーか・・・気になる人間なら沢山居るけどな
恋愛云々が絡んでるのは、約二名・・・」

「約?・・・って話からするに男の・・・人、だよね?」

「・・・厄介な保留が一名」

「なんか複雑そうだね・・・」

「だからため息ついてるんだけどな・・・」




そう発言した直後


俺とヒトミの真横で何かがドサリと落ちて
そのドサリからゴロゴロと転がるような音と共に
ガチャンと鋭い効果音


そんな突然の大きな音に俺とヒトミは同時に音のした方に顔を向けて



「「ぅわっ!!」」



二人同時に驚いたりする

そりゃそうだ

俺とヒトミの真横に顔面蒼白で棒立ちした鷹士が突っ立っていたのだから
ソファを隔てている為地面に何が落ちたのか確認は出来ないが多分買い物で買ってきた物だろう
しかしなんという顔つきか
まるで世界の終わりでも見たかのような驚愕の表情

そんな表情に多少に恐怖を感じた俺とヒトミはまだ互いに抱き付き合ったままだったりする



「お、お兄ちゃん・・・?」

「鷹士・・・音もなくそんな所に突っ立ってたら吃驚するだろ・・・」



俺の癒しタイムは終わってしまったらしい
サプライズな登場をした目の前の蒼白男のお陰で先程の癒しまで吹っ飛んでしまった














、もしかして・・・その・・・誰か気になる人でもいるの?』

『・・・なんつーか・・・気になる人間なら沢山居るけどな
恋愛云々が絡んでるのは、約二名・・・』

『約?・・・って話から察するに男の・・・人、だよね?』

『・・・厄介な保留が一名』



こんな会話が交わされたのは今し方
多分10秒前
しかも俺の目の前で


最初は扉を開けて入ったとき、俺の存在に気付いていない二人が会話をしていたのだが
可愛い妹と弟の可愛い抱擁シーンに心和まされたのもつかの間
ただいま、と声をかけようとして歩み寄った直後


鈍器で頭を殴られたような衝撃が俺を襲った


しかも恋バナ

弟の

大切な、大切な弟の恋バナ


更に相手は・・・   ・・・  男  ・・・  ?


男、というと生物学上雄と呼ばれていて交尾で雌と交わりをもつ哺乳類や爬虫類であって
しかし両生類でも極稀に卵を作る生物もいてしかしだからといって人間の雄が卵など作れるはずも無く
よくよく考えてみれば雄同士なんて子供もできないしなんのメリットもない取り合わせであって
そんな繋がりになんの意味があるのかよくよく考えれば甚だ疑問にしか思えないだってそうだろう
こんなにも可愛くて綺麗で美人で大切な俺の弟を何故そんな狼ドモに笑って渡さなければならないのか
否断じて許さんわざわざどこぞの馬の骨にを渡すぐらいなら俺がその男をこの世から消してやる
しかしそれでは手緩いそれでなくとも今し方の会話で既にの心に揺さぶりをかけるくだらない
ミソッカスが二人もいるというのに更に保留とはなんだ保留とはが自ら厄介とまで言う保留が
ある意味一番危険だ断じて放置するわけにはいかないああでもまたこんなことを勢いで聞いてしまえば
またやヒトミに冷たい眼で見られてしまうでもやっぱり物凄く気になるしこの状態だったら絶対
夜も眠れないだろうから聞いておいたほうがいいそうだそうしようのハートに触れようとする
不埒な輩は俺が影でコッソリ消すそれしかない、ああ!それしかないんだ!!!



その間0.01秒



・・・い、今の話は・・・ほ、ほほほほほほ本当か?」



緊張で声が裏返るがそれを気にするどころではない
しかし俺の質問には困惑した表情を見せて



「なっ・・・なんの事だよ」



はぐらかした

そんなの反応に更に不安感が煽られる



「それはアレか!?お年頃だから兄ちゃんには知られたくないとか言う奴か!?
で、でもな、お前に見る目が無いというわけじゃないんだが相手が実はお前の・・・
ほら、財産目当てとか・・・名声目当てとか・・・モデルだし、か、体目当てでよってくる奴も居るわけでだな
兄ちゃんはそれが心配で心配で・・・っ!」

「・・・」

「口五月蝿いのは解ってるんだけどな?でもやっぱり兄ちゃんは心配なんだ
お前は他の人と違って有名だし・・・それに前の温泉旅行でも危ない目に遭ってるし・・・
それにお前自身が厄介だっていう保留一名なんか特に胡散臭いじゃないか!!」



いつもこういうことを言えばヒトミにも冷たくあしらわれて
「うるさい」だの「心配性」だのと言われて結局話の途中でどこかに行ってしまうのだが
俺は精一杯今の本当に心配なんだという気持ちを目一杯言葉にして表した
思いっきり情け無い顔をしているだろうが今の状況ではそれはどうでもいいことで

はとりあえず俺の言葉を最後まで聞いて、何故か俯いて微動だにしなくなった

そんな様子にヒトミが心配そうに声をかける



?・・・大丈夫?」



そんなヒトミの呼びかけに返ってきたのは盛大なため息



(その厄介で胡散臭い保留が鷹士だっての・・・)



盛大なため息とともにそんな呟きが混じっていることに
そして俯いたの頬が僅かに赤みを帯びていたことに





俺はまだ、気付かない