乙女的恋革命ラブレボ



 ―はないちもんめ― 30









胸が早鐘を打つ相手は



ただ1人だけで






「・・・で、なんで俺んトコに来るかな」

「しょーがないだろ、足が向いたんだから」



俺の隣には毛並みの良い犬
雅紀がシュタインと呼んでいる愛犬だった

季節は夏真っ盛り

その所為か室内はエアコンで温度調整されていて居心地が良い
学期末の試験が今日終了したと同時に明日から夏休みに入る
そんな学生が浮かれるような日の午後
雅紀は苦笑いしながら俺の先程の言葉に答えた



「あのさぁ、突然 『 男にときめいたことあるか 』 とか直球に言われても俺の方が困るんだけど」

「だからそれもしょーがないっての
もう雅紀しか妥当な相談者がいねぇんだから」

「へぇ・・・?俺より前に相談した人ではどうにもならなかった訳?
・・・ちなみに誰」

「・・・保健医とかヒトミとか」

「・・・あ、そ」



俺の返答にあからさまに視線を逸らしてあさっての方向に彷徨わせながら後頭部を仰ぐ雅紀
すぐに不貞腐れた表情を見せて脇に伏せ込んだシュタインの背中を撫でながら
不満そうに俺をジトリと見つめてくる



「先生とに相談する前に一番に俺んトコにきてくれれば良かったのに」

「へ・・・どういうことだよ」



雅紀の言葉にかすかな期待を抱いて参考までに、とここぞとばかりに詰め寄る
何か良い返答が期待できそうで思わず身を乗り出した

そうだ、よくよく考えれば雅紀も外国育ち
そして俺と同じ様な境遇を少なからず経験していて
多少人格に問題があろうが十分に返答に期待が持てる要素を持っている



「あるよ、男にときめいたこと」

「そうなのか!で!?好きになったのか!?どんな感じだった!!?」

「うーん・・・やっぱり女の子とか関係なく見惚れるよね
思いがけない面で呆気に取られて、それで一気に心臓に来るみたいな」

「・・・で、この日本でってことで悩んだりとかしないのか?」

「悩むっていうか・・・」



そこまで言うと雅紀は俺に恨みがましい視線を送ってくる
その視線に疑問を感じながら首を傾げると雅紀は小さくため息をついて
ヤレヤレといったジェスチャーを見せた
そんな反応に俺も不快感を煽られて顔を顰める



「・・・なんだよその反応は」

「いや・・・思いっきり忘れてそうだなぁとか思って」

「・・・何をだよ」

「俺は鷹士さんとは馬が合わないみたいなんだけどさ、
でもも鈍さでは鷹士さんに引けをとらないよなぁ・・・そんな所は似てるのに
なんであーいう独占欲とか加護欲とかないかな・・・」

「何の話かさっぱりだ、解りやくす日本語で話せ」

は鈍感で無防備だって話をしてるんだよ」

「・・・ヒトミによく言われる」

「いや、もある意味鈍感だけどさ・・・というか兄弟は皆鈍感だよな」

「鈍感云々はどうでもいいから本題に入れって・・・」

「・・・結構重要だと思うよ?鈍感」



またも呆れた表情を見せた雅紀は徐に立ち上がるとシュタインをゲージに連れて行く
それを地べたに座り込んだまま見送って
シュタインをゲージに入れてから戻ってきた雅紀は突然俺の横に腰を下ろして
肢体をくっつけてきた



「・・・雅紀?」

「ドキドキしない?」

「アホか」



真横で悪戯っぽく笑みを見せる雅紀に保健医直伝チョップを食らわせて
目の前のテーブルに頬杖をつく



「・・・、やっぱり忘れてるだろ」

「だからさっきから何をって聞いてんだろ」



言うが早いか肩をつかまれて無理矢理雅紀の方面に身体を向けられる
視界に入ってきたのは雅紀の真剣そうな眼差しだった



「・・・雅紀?」

「ずっと前だけどさ、俺言ったはずだよ?
『相手がだったら皆も認めてくれる、絶世の美男子なんだから』
あれ、俺の本心で微妙に告白のつもりだったんだけど」

「こ、告白ぅ!!???」



あんなあたりさわりない台詞で解るか!!と告げれば
以前雅紀はニッコリと微笑んだまま平然と告げてくる



「じゃあこの際だからハッキリ言うけど
のこと好きだよ、愛してる・・・所構わずイチャイチャしたいぐらい」

「・・・」



思考が真っ白になるとはこのことか
そんな時ほど愚問が出てくるのは何故なのか



「俺、男なんですけど」

「イギリスでは法律的にも認められてるんだろ?
後はが俺の好意を受け取ってくれるかどうかなんだけど」

「・・・え、と・・・いや・・・その・・・」

「ちなみに背中の傷、お兄さんに知られたらやばいんでしょ?
好意受け取ってもらえなかったらうっかり口が滑っちゃうかも」

「そりゃ脅しだろうが!!」



雅紀の言葉に突っ込んで
しかし雅紀はその笑みを引っ込めるとすっと真顔になってこれでもかと俺に顔を近づけると
僅かに鼻を掠めて、その距離で俺に答えを求めてきた



「ねぇ、俺と付き合わない?絶対損させないと思うんだけど」

「近い、顔近いっての
しかもなんの損得の話だ!」

「決まってんでしょ」



言うが早いか、俺の顎を捉えたままもう片方の手を胸元に沿って置いて指先で妖しく辿る
胸を滑るその感触にぞわりと総毛立って無意識に雅紀の両肩を押し返していた
そんな反応に少し間を置いて俺を見つめる雅紀
俺も無表情で雅紀を見据える



「・・・嫌?」

「・・・ああ」

「ハッキリ言うなぁは・・・」



雅紀はまた明るい表情を見せて、「あ〜あ、ふられちゃった」と言うと
俺から離れて背後のベッドに持たれかかる
俺はどう反応を返せばいいのか分からないままその場にじっとしていると
宙を仰いでいた雅紀の視線が俺に留まる



「・・・、背中の事意外にまだ何か隠し事あるだろ」

「・・・」



唐突な雅紀の言葉に思わず顔を顰める
そんな俺の表情の変化に「図星?」と苦笑いを浮かべて
俺は警戒を含んだ表情で雅紀への視線を鋭くした



「・・・なんでそう思う」

「俺の方が驚いたっての、突然全身冷たくなるんだから」

「・・・?」

「わかってないの?ホラ、すっごい体温下がってる」



俺の頬に触れてきた雅紀の手は暖かく感じた

温かい

その温度が気持ちよくて思わずうっとりと目を閉じてしまって
俺の反応に呆れた雅紀の声が部屋に響いた



「・・・拒むか誘うかどっちかにして欲しいんだけど」

「うっ、悪ぃ・・・」

「まぁでもこの冷たさは異常だよ、なにもしないから、とりあえず抱きしめさせて」

「・・・ああ」



雅紀が両腕を広げてゆっくりと俺を引き寄せる
スポーツをしている所為か俺よりがっちりしていて
思わぬ温かさに抵抗する事無くその温もりを受け入れた

(あったけぇ〜・・・)

そんな俺の心中とは逆に「冷たい・・・」と頭上から呟く声
解っている
何故こんな異常を来たしたのかということは
学校の方ではジェイの存在で以前より随分と楽になったが
今度は精神面で疲れが出ているらしい
今更だが、例え誰も俺のことを知らないからと言って1人帰国したのは間違いだったかと思い直す
それで無くとも以前マスコミにどこぞのアホがタレコミをした所為で
毎日多くのギャラリーに囲まれているのだ
向こうでの生活となんら変わりなくなってきていると言う事は
きっと俺にはあの二人が必須だ



『 あいつ 』 が恋しい



ふ、とそんな事を考えてしまって閉じていた目をうっすらと開く
それと同時に雅紀が口を開く



「差し支えないんだったら・・・乗りかかった船ってことで話してくれない?」

「・・・そうだな、雅紀は背中のことも知ってるし・・・
誰にも言わないなら」

「言うわけ無いだろ・・・で、話してくれんの?」

「・・・」



静かに俺を刺激しないような声色で訪ねてくる雅紀の今の俺の扱い方は
本当に壊れ物を扱うかのように優しかった
そんな態度に微かにもう1人のSPを重ねて
ぽつりぽつりと、それでも確実に俺はその事柄を口にした



昔・・・向こうに渡って二年ぐらいしたころ

俺は幼いながらそのカリスマ性で既に有名になりつつあって
12歳の頃の話だ
その頃から熱狂的なファンが常に付いて回るようになって
同時に沢山の嫌がらせやファンの暴走も多発していた
それから更に三年ぐらい経った頃

俺に専属のボディガードが二人ついた

その原因は 『 強姦未遂 』
当時15歳だった俺は一部のファンにつかまって姦されそうになって
それまで常に気を張っていた緊張が切れて一気に精神面に出た
一時的に仕事が出来ない状況に陥った俺に
そこから本腰入れてくれた事務所が優秀なボディガードを用意してくれた

1人は俺の周りの人間を掃除するジェイ

もう1人は精神面で俺を守ってくれるケビン

完全に俺の身も心も守ってくれる二人だったけど一番苦労したのは多分ケビン
カウンセラーとしても常に俺の傍に控えていて
ファンの暴動のお陰ですっかり対人恐怖症に陥っていた俺を温かく包み込んでくれたのが彼だった
俺が仕事に復帰するまでの一年間の沈黙の間に他者の温もりをもう一度教えてくれた
それでもあの強姦未遂の時の感覚の所為で

無意識下である状況に達すると一気に体温が下がって
酷い時はそのまま昏睡状態になるという状況になっていた



そこまで話して沈黙する雅紀を見上げる
視線が合えば小さな声で



「・・・話してくれてサンキュ」





自分のことでもないのに苦しそうな表情で告げてくれた
俺を抱きしめてくれている雅紀の腕に僅かに力が篭るのがわかって
ふわりと、ケビンと居る時と同じ様な安堵感に包まれたのが解った








いつのまにかこんなに濃い設定の主人公になってしまった
完全に名前変換のみの小説っぽくなりつつ在りますが
ここまで読んでくださっている方々有り難う御座います