乙女的恋革命ラブレボ



 ―はないちもんめ― 34









に好きだと告白してからと言うもの
既に鷹士さんというの兄たる存在が大きな壁である事は自覚していた
しかし同じクラスでの秘密も共有している為
何かと俺の方が有利な要素が多いと考えていたのだが

どうもの反応を見る限り、そんなに有利でもない
むしろ不利であるということを自覚させられてしまう


そんなある夏休み中の昼下がり


ちょっと前にたまたま新しいSPのケビンさんと初対面して
あまりの鷹士さんとの顔かたちのうりふたつのさまに最初は動揺していたのだが
後輩の深水からその人物の素性を説明してもらえる機会があったため
こうしてケビンさんの存在を知ることができた

のはとりあえずいいのだが

問題は今俺の視界の先で繰り広げられている光景だ



マンションの廊下に




ケビンさんが居る


そこまではいいのだが


(なんなんだよあの執拗なスキンシップ・・・!!!)


の部屋に遊びに行こうと五階に上がった時点で目にした光景は
の部屋の前の廊下のど真ん中で
バカップル同様にいちゃこらしているとケビンさんの姿だった

しかもそれが普通だとばかりに
ケビンさんはの腰に腕を回していても同様にケビンさんの背中に腕を回している
見る限り下半身は完全に密着していて、脚はお互い絡まっている始末
そんな状態でお互いの口が動いているので話をしている事は分かるのだが明らかに日本語ではない
そして時折ケビンは身長が高い頭を屈めての頬や額や瞼にキスをしている

あんな挨拶は流石の俺でも見た事が無い

しかも姿が鷹士さんそっくりなものだから余計に不快感も湧く
いつまでもここで見ているわけにも行かなくて出て行って邪魔してやろう、と
思いつつ脚を踏み出そうとすれば



「!」



瞬間、踏み出そうとした足を反射的に引っ込める

だって

どうみても今二人は

キスを交してるからだ

しかも触れるだけの幼いキスではない、何度も角度を変えた
顔の近づきようから完全に舌が入っているであろう大人のキス
しかも場所が廊下だからか、離れた俺からも微かにの声が聞こえてくる
本当に微かだから多分、の・・・俗に言う喘ぎ声だと思うのだが

こんな場所で何をやっているんだ二人とも
余りにも長いキスに見かねて視線を外すと熱の上がった思考を冷ますために
多少呼吸を深くしながらゆっくり目を閉じる
これでは単なるでばガメではないか
しかし自分もに好感を持っている手前、このまま大人しく引き下がるわけにも行かない

よし、と

気を取り直すがやはりもう一度二人の様子を窺うために少しだけ壁から顔を覗かせた





「・・・」



あの二人・・・

本当に何をやっているんだ

そんな事しか思いつかなかった
だってそうだろう
明らかにキスをしながらの上半身
はだけたシャツの中に手を忍ばせているケビンさんになんと言えばいいのか
しかもも全く嫌がる素振りは見せないでむしろ艶のある表情でケビンさんを見つめている

(・・・おいおいおい・・・)

するり、と
シャツを滑るように脱がせて露になった白い肩に口付けるケビンさん
そして優しい動作での片手首をつかむとゆっくりとした動作での頭の横の壁に押し付ける
壁に押さえつけた手首から撫でるように腕を沿う指先がの胸板に辿り付いて
ケビンさんはその胸板に顔を寄せると肩と同じように口付ける

・・・しかし口付ける場所は完全に普通の抱擁の類では無い

俺の視界にはの胸の飾りを口に含んだ瞬間がハッキリと映っていた
顔を紅潮させたは嬉しそうに笑みを浮かべながら
自分の胸元に顔を埋めているケビンさんの髪を遊び撫でるように梳いた

ピクリ、との体が跳ねる

何故跳ねたのか、なんてことは知りたくも無いのだが大体想像がついてしまう所が悲しい



「・・・ぁっ」



今度はハッキリと聞こえてしまったの声

本当は

このまま覗くという低俗な行為はさっさと止めたいのに

遠目からでもの表情に魅了されている自分が居る
そんな時俺の背後のエレベーターが動いた

驚いて振り返るとエレベーターは一階から一気に三階まで上ってくる様子だ

(おいおいおい・・・五階には来るなよ・・・?)

そんなことを半ば懇願的に思ったのだが
タイミングの悪さか、エレベーターは五階の色を点滅させると静かな音で扉を開いた
扉の向こうから姿を見せたのはなんと



「・・・若月先生!!?」

「おぅ華原、お前そんな所で何やってるんだ?」



今の廊下での状況を何も知らない若月先生だった
確かと旅行の引率に行っていたのではなかっただろうか
そうか今日帰ってきたばかりなのか、と思いながらもなんとかこの場から先生を帰そうと必死になる



「せ、先生、旅行はどうでした?楽しかったですか?」

「おぅ、の奴は海で溺れやがるし・・・色々あの問題お兄さんに報告があってな」

「へぇ〜、そうなんですかー」



なるだけ大きな声で、廊下の先に居る二人にも聞こえる声量で声を出す
さりげなく先生の目の前に足を向けて先生を足止めした

(二人ともさっさと部屋に入れー!!)

なんで俺がそんな気を回さなければならないのか、と思うが状況が状況だ



「華原・・・おまえそんなに声出さなくても聞こえてるっつの」

「だ、だって先生ヘッドホンしてるじゃないですか〜あははは」

「・・・何を隠してやがる」



ニヤリと人の悪い笑みを浮かべた先生
そんな言葉にギクリと動きが止まってしまう
その反応を肯定と取ったのか、先生はすぐさま俺を押しのけて廊下の先に脚を向けると
全ての部屋の扉が見渡せる一本筋に脚を踏み入れるとキョロキョロと顔を動かす
そして例の二人のいる方向で顔と視線を留めて


ポロリ、と


咥えていた煙草を落とした


先生の反応にまさか!?と思い俺も慌てて廊下の先に顔を出す

そして

俺は力の限り絶叫してしまった



「「何やってんだお前等!!」」



しかも先生と見事に声と台詞が被る
俺の場合、折角気を利かせてやったのになんで部屋に入ってないんだ
という意を込めた「なにやってんだ」のイントネーションだったのだが
先生の声色には確実に怒りが含まれているように聞こえた

そりゃそうだ、叫びたくもなるさ

俺があれだけここには人が居ますよと存在を強調してやったのに
全く無視したらしいケビンさん
それでもは多少は俺の意を汲み取ったらしく先程よりはマシな体勢でケビンさんと居たのだが
上半身はだけてて、まだ下半身が密着した体勢で抱き合っていれば
何をしようとしているのかも流石の俺でも想像できてしまう
そしてもしかしなくても今まで旅行で出払っていた先生は・・・


ケビンさんと初対面だ


先生は酷い形相でヅカヅカと歩を進めて二人に近づく
あの様子は

血を見そうな予感がする

きっと気のせいではないだろう、そう確信した所で気の抜けたの挨拶



「お、保健医、ヒトミの引率ご苦労さん」



は自然な動作でケビンさんから離れて、しかしはだけたシャツをそのままに先生に向き直ると
後ろで突っ立っている俺にも「よっす、雅紀」と気軽に手を振ってきた
の軽い態度に一応ケビンの間合い寸前で脚を留めた先生は
目の前に歩み寄ってきたのはだけたシャツをだらしない、と指摘

俺はというと 「 キスマークとか大丈夫だろうか 」 とあらぬ心配をしてしまっていた

はマイペースにシャツのボタンを合わせ始めて
同時に先生は厳しい口調でケビンさんを問いただした



「てめぇ、どこのどいつだ」

「ケビンって言って俺のもう1人のSPだよ」

「今さっき何をしていた
不純同姓交遊だったら教職の立場である俺様は見過ごさんぞ」

「それを保健医が言うか?説得力ねぇよ・・・」



(普通不純 『 異性 』 交遊って言わない?)
1人密かに突っ込みつつ、俺も三人に歩み寄って事の成り行きを眺める
しかしそれ以上にケビンさんを鷹士さんと見なかった先生に意外さを覚えた
は先生の言葉に呆れて
俺もの言葉にうんうん、と頷いた
しかし先生は本気で珍しく怒っているらしく



「・・・、お前は今日本に居る、郷に入っては郷に従えって言葉を覚えておけ
二度とさっきの様なことは許さないからな」

「・・・何怒ってんだよ保健医・・・俺が誰と話をしようが勝手だろ」

「・・・じゃあなんだこの痕は!」



今し方留めたボタンが数個弾け飛ぶほどの力で襟元を引っ張られたのシャツ
その所為で首元が露になり、数箇所鬱血の痕が俺の視界にも映った

その瞬間SPのケビンさんが機敏に動いてを庇うように間に割り込んだ



「!!」



シャツをつかんでいた手をケビンさんに激しくはたかれて
先生は更に厳しい表情を見せる

うぉ・・・なんか修羅場って気がするのは俺だけだろうか

しかし本当に珍しい、先生がここまで感情を見せるのは今日が最初で最後かもしれないのだ



「・・・



先生の怒りを含んだ声が廊下に響く
もケビンさんを下がらせると真撃に先生を見つめて



「俺のプライベートな問題だから・・・怒らないでくれよ」

「っ・・・」

「大丈夫、レイプされてるわけでも、従わされてるわけでもないから
むしろ俺がそれを強制してる立場かもしれないし」



「とんでもない、



の言葉に即座に反応を返すケビンさん
意外にも、衝突するのではないかと思われたこの場は
の柔軟な態度のお陰でなんとか治まりを見せ始めている

先生も苦虫を噛み潰したような表情でケビンさんを睨みつけている

その様子に
(まさか・・・先生もを・・・?)
そこまで考えて、まさかね、と首を振る
それにしても今日がこの状況だと遊べないだろう、と踏んで
俺は潔く退散を始める

最初はあの二人がどんな関係なのか、と気になって覗いていたのだが
の今し方の反応でまだまだ望みはある、と思い直すこともできた


のあのライトな対応はにとってケビンさんがそういった対象であることは当たり前の域で
包み隠さないことが恋愛対象でもなんでもないということの表れ
そして以前聞いた「精神的なボディーガード」という言葉との過去の話で
ケビンさんの役割がどのような位置にあるのかおおよその見当がついたのだ


まぁ、それすら知らないであろう先生はどんな心境なのか図りかねるが


俺には関係ないか、とたまたま目の合ったケビンさんに不敵な笑みを見せて
に今日は遊べそうに無いからまた来るよ、と告げて




その場を後にした