乙女的恋革命ラブレボ



 ―はないちもんめ― 35









「最近、元気ないねー」

「そ、そうなのか?」

「最近お兄ちゃんもおかしいよねー」

「そ、そそそそそうか!?兄ちゃんは何時も通りだぞ!」

「最近ずっと付けてるその時計型ブレスレット、綺麗だよねー」

「はは、綺麗だろ?」

「これだけシンプルなのにさりげなく埋め込まれてる宝石って本物?」

「・・・さぁ・・・俺は目利きがないから本物かどうかはわからないなぁ」

「これ・・・もし本物だったら・・・多分凄い金額じゃない?」

「実はこれどこかで見覚えがあるんだよなー・・・なんかの雑誌で見たことあるようなないような・・・」

「もしかしてがモデルの仕事の時に使ってた、とか!!
あはは、そんな偶然あるわけないかー」

「うーん、でもそうだなぁ、今度また雑誌を見てみようか」

「え・・・雑誌?雑誌って・・・の外国のモデル雑誌?」

「ああ、そうだぞ!
が外国で活躍し始めた時からが載ってる雑誌は全部集めてるんだが・・・
言ってなかったか?」

「言ってなーーーーーーい!!!!!そういうことは早く言ってよお兄ちゃんの馬鹿!!」



九月初め、たまたまヒトミは俺の部屋に訪問していて
最近の元気が無い、と俺に何か思い当たる事は無いか相談に来ていたのだ
ヒトミの「の元気が無い」という発言で思い当たる事などあるはずが無く
俺もかなり心配になってきて、から貰った時計型ブレスレットを眺めながら
指先でその形をなぞる

鎖のようなデザインに円盤型の時計の回りに散りばめられた小さな緑色の宝石
その蒼の中に、一つだけ存在する紅い色の宝石が一際目立って針の上で踊っている
その円盤部分に耳を沿えばコチコチと小さく音が聞こえて
今では珍しい薇式で電池いらずの時計だった









「ホラ、鷹士」

「え?なんだ?ってうわ!?」



俺の誕生日の夜、自室で読書をしているとなんの前触れもなく俺の部屋の扉が開かれて
背後から呼ばれて振り向けば突如額に叩きつけられた硬い物体
ゴツっと痛い衝撃と共に手の中に落ちてきたのは綺麗な時計型ブレスレットだった



「・・・、これは・・・」

「誕生日だろ、やるよ、それ」



ぶっきらぼうにムスっとした表情でボソリと告げてきたは用は終わったとばかりに
玄関に向かって、止める間も無く俺の視界から姿を消した










お陰で未だにお礼も言えてなかったりする

次の日にヒトミが旅行から帰ってきて、食事は三人で取っているものの
俺が話を切り出そうとするタイミングではさっさと部屋に帰ってしまうのだ
一言お礼を言うのに何故こんなにもタイミングをつかむのが難しいのだろう、と思いながらも
時計を渡された時の回想をして無意識に微笑んでいたことをヒトミに指摘されてしまった



「・・・なんか愛する人からプレゼント貰って幸せ絶好調なノロケ少年みたいだね、お兄ちゃん」

「・・・そうか?」

「というかそのブレスレット、貰い物なの?
お兄ちゃんすっごく幸せそうな顔してるんだもん・・・あ・・・そうだ!」

「こ、これは・・・」



からのプレゼントだ、と言おうと思ったがどうも照れくさくて口篭る
しかしヒトミは物凄く明るい表情で俺の目の前にびしっと指を向けてきた



「彼女が出来たんでしょ!!?」

「・・・は?」

「旅行中に先生から聞いたもんね〜!ちょっと前に商店街でお兄ちゃんと女の人が
一緒に買い物してた、って!しかもラブラブ全開だったって聞いたよ!!
ねぇそうなんでしょ!?」

「か、買い物ぉ!?兄ちゃんはそんなの覚え・・・っ」



そこまで言いかけてはたり、と気が付く


そういえば


女装したと一緒に買い物をしている所を


若月先生に見られたような覚えが


ここでヒトミの発言を否定してしまえば
もし、仮に、ヒトミが先生に再確認に行って、話しが食い違う事に気がつかれでもすれば
が女装していたことがばれて

そうなれば俺はまたに締め上げられてしまう(*16話後半参照

今度こそベランダから突き落とされかねない(*17話後半叫び声参照

そこまで考えれば俺には肯定という選択肢しか残されていなくて
以前のの拷問が脳裏に過ぎった俺は
否定しかけたが思い出したという表情で即座に頷いていた



「ああ、そうだぞ!でも彼女も大切だけどお前も大切だからな!!」

「・・・お兄ちゃんが他人を大切って言うなんて初めて聞いた・・・!」



俺の言葉に驚いた表情を見せるヒトミ
・・・まぁ本当はがあの時の女性なのだから勿論大切だ
この言葉に嘘偽りは無い
俺に彼女が出来ている事が余程珍しいのか、ヒトミは更に身を乗り出して質問し始める



「ねぇねぇ、どんな人なの!?」

「ど、どんな人って・・・」



そこで思い浮かべるのは勿論の姿



「・・・凄く美人で・・・優しくて、そのくせ照れ屋な所が可愛くて
ついつい抱きしめたくなっちゃうんだよなー・・・」



ヒトミと同じで、と内心付け加えつつも俺の言葉に
「お兄ちゃんにもやっと春が来たんだね!」と、言いつつ更に嬉しそうに訊ねるヒトミ



「それで?結婚とか考えてるの!?
お兄ちゃんが選んだ人なら絶対良い人だろうし!」

「け、けけけけけ結婚!!!???そ、そそそんなの考えてるわけないじゃないか!」

「えー、でもお兄ちゃんが夢中になるほどの人だよ?
横からどことも付かない馬の骨に掻っ攫われてもいいの?」

「うっ!そ、それは勿論絶対許せないけど・・・け、結婚は・・・」

「それお兄ちゃんのエゴだよ?
結婚するつもりはないのに好きだから離さないなんて」

「いや、まぁそうなんだが・・・」



相手がなのだから無理だろう、と思いつつ
真実、だと言うことも言えない状況ではどうすればいいのかと混乱してしまう
しかし



「お兄ちゃん、考えてみてよ
若月先生がもし、万が一、お兄ちゃんの彼女に手を出したらどうするの?
いや、彼女さんが心変わりして先生と付き合い始めたらどうするのよー」



・・・

・・・若月先生とが?



「そうなる位なら俺が結婚してやる!!!」

「よし!その意気だお兄ちゃん!!」



がばっと立ち上がってぐっと拳を握る
若月先生とがくっつくなんて絶対に許さない
むしろに好きな人が出来てる時点で許せない
は俺が一生守って行くんだ、と思いつつ横で見守る妹にぐわっと向き直って



「その時はお前も一緒だ!」

「いや、それは遠慮しとくよ」



しかし即座に拒否されて僅かにへこむ俺
ヒトミはと言うと俺の最後の発言に「やっと弟妹離れしたかと思ったのに」と落胆の声で呟いていた
一息ついたヒトミは俺に向き直って再度嬉しそうに微笑む



「でもさ、お兄ちゃんに大切な人が出来て私も嬉しいよ
お兄ちゃんこのままじゃ私やにべったりで老後迎えそうな勢いだったからさー」

「・・・兄ちゃんはそれでもいいんだけどなぁ」



ヒトミの言葉にボソリと呟けば何故か厳しい視線
しかし思い出したようにヒトミは声を明るくさせた



「そういえばお兄ちゃん、の雑誌持ってるなら見せてよ、私も見たい!」

「ああ、いいぞ!見て驚くなよー?」



机の下の収納棚を開けてが出ている外国のモデル雑誌をドサドサとヒトミの前に出す
その量に驚いたのか、表情を固まらせるヒトミ



「こっ・・・これ全部が載ってる雑誌・・・?」

「ああ、海外でしか販売されてなかったからいつも通販で取り寄せたんだけどな」

「・・・流石お兄ちゃん」

「そうかぁ?そう言われると嬉しいなぁ」

「いや、褒めてないから」



冷静に返事を返すヒトミは雑誌の中のある一冊に眼を留めて
その雑誌を手に取る
それはがでかでかと表紙を飾っている季節が冬の時のものだった
表紙には大きな 『 No'1 』 の文字
多分トップモデルに君臨したての時の雑誌だろう

白いファーに身を包んで、しかし白のコートの下は裸
ブルガリのリングに白のズボン、銀色のベルト、白のシルクハットに黒のサングラス
僅かに微笑しているその姿は見る者を惹きつけてやまないトップモデルのオーラを放っている
その表紙に感心のため息をつく妹



「はぁ〜・・・ってばすっごい綺麗だね
本当にこれだと王子様だよ・・・」



パラパラと中身を捲りつつ、あるページでひたりと止まったその様子に
どうしたのかと声をかけつつ、そのページを覗き込むと



「このブレスレット・・・今お兄ちゃんがしてる奴じゃない?」

「ん・・・?あ、本当だ!」

「すごーい、偶然なんだねー
もしかしてお兄ちゃんの彼女さんものファンなの?」



聞いてくるヒトミの声を耳にしながら
良く見ればあるページでが俺にくれたブレスレットと同じものをして写っている
コメントが全て英語の為、ヒトミがわからないとぼやくが
俺にはしっかり訳す事ができた
心の中でそれを読み上げる



(何々・・・?『 オリジナルのデザインのブレスレット初公開
大切な人の誕生石をふんだんに使った最高級時計型ブレスレットの気になる値段はなんと300万円 』)



「・・・」

「お兄ちゃん?なんて書いてあるの?」

「え!?あ・・・えーっと、特にブレスレットに関するコメントは無いみたいだな!」

「そうなんだー、じゃあやっぱり偶然なんだね」



興味が失せたように他の雑誌に手を伸ばすヒトミを横に
俺は脳内でコメントの内容を反復する

(さん・・・っ三百万だって!?こ、これが・・・!??しかも大切な人の誕生石とかなんとか・・・!)

ブレスレットをしている手首をじっと見つめる
これがのオリジナルだということは嬉しかったが
それ以上に 『 大切な人に向けて作ったもの 』 であると言うことに
ショックを隠しきることが出来なかった