乙女的恋革命ラブレボ



 ―はないちもんめ― 37









次に目を覚ました場所はどこかの病室だった
最初に目に入ってきたのは真っ白な天井
そして視界の左には俺を覗き込むジェイとケビンの姿
右側には鷹士とヒトミが居た


ああ、そうか


また意識を失ったのか


理解するのにそう時間はかからなかった



・・・目、覚めた?大丈夫・・・?」



ヒトミの躊躇いがちな声
俺はヒトミに顔を向けて僅かに微笑む
全身がだるくて、まだ体温も戻って無いらしく寒さを覚えるのだが
隣にケビンが控えている、意識も戻ったから大丈夫だろう



「悪い・・・俺、また気ぃ失ったんだな」

様・・・ケビンを常に傍に付けることになりますが宜しいか」

「ん、そうだな・・・」



ジェイの言葉に頷いてケビンに視線を送る
心配そうに見つめる青い瞳が俺の姿を映していた
ジェイは脇に居る鷹士とヒトミに厳しい視線を向ける



様の病状は理解していただけたと思います
今後、軽率に様に触れる事はなさらないように」



ジェイの口ぶりだと俺の発作のことは説明してくれたらしい
「外に控えておりますので」と俺にことわったジェイは病室を出ると扉を閉める
鷹士とヒトミの沈んだ表情に居たたまれなくなって、苦笑いで二人に話しかけた



「鷹士、ヒトミ、俺はもう大丈夫だから
ケビンがついててくれるから二人はマンションに帰ってろよ」

「・・・っ」



俺の言葉にはっとしたように顔を上げた鷹士は何かを言いかけて
しかし何も声に出す事無く口を噤む
目を伏せて暫くして、椅子から腰を上げた鷹士は笑顔ともつかない表情で俺を見つめる

俺はその表情に内心首を傾げていた












俺はもう

の支えになってやることは出来ないのだろうか

発作の事も全然知らなかった
背中の大きな傷の事でさえは俺に話そうとしない
向こうであった出来事の一切を俺に話してくれた事が無い

俺は

元からなんの支えにもなっていなかったのかもしれない、と




気付かされた




「じゃあ・・・マンションに帰ってるから・・・」



短くそう告げて、ケビンさんに視線を移す



を・・・御願いします」

「・・・」



俺の言葉にケビンさんは俺を見つめるだけでなんの返事も返さない
その瞳は「早く出て行け」と告げているようにも見えた
それもそうだ
発作のことを知らなかったとはいえ俺がを危ない状態に遭わせたも同然なのだから
居たたまれなくなって身を翻すとを見ることもせずに病室を出た



『 は人に過剰に触れられると急激な体温の低下を引き起こして
酷い時には昏睡状態に陥る症状を持っているんです 』



たったそれだけの説明で
何が原因で、とかどうしてそういう病気を持ってしまったのかと尋ねても
全く答えようとしなかったSPの二人

家族である、一番身近に居るはずの俺はなんだか萱の外のような感覚を受けて

悔しくて、悲しくなった

病院の廊下を歩いていると背後から誰かの足音、そして呼び止める声



「タカシさん」



振り返れば俺を追ってきたらしいケビンさんの姿
そしてまだ慣れていない、舌っ足らずな日本語



「今回の状況は多分タカシさん、原因ではありません
きっとあの時の条件がいくつか重なった所為だと思いマシた」

「・・・あの、時・・・?」



気になる言葉を発したケビンに思わず聞き返したが
どうせ答えてもらえないのだろうと思ってため息をつくと視線を外して
気休めならよしてくれ、と言わんばかりに無視して病院を出ようと歩を進めた
既に振り返ろうとしなかった俺は

ケビンさんが何かを言いかけて口を噤んだことを知らない











「ケビン、どうかしたのか?」



鷹士と帰る為に病室を出たヒトミと入れ替わりに病室に帰ってきたケビンに尋ねる
先程鷹士を追うように病室を出て行ったのだが
さほど間を置かずして帰ってきたのでどうしたものかと思ったのだ
しかしケビンは小さく首を振ってなにかを誤魔化すようにふわりと微笑む

ケビンがこういった表情を見せた時は大概俺を気遣っている時で
俺もそれ以上の追及をすることは無かった

常態になれば退院できると聞いて、この調子だと一日ぐらいで病院を出られるだろうとふんで
傍に控えているケビンは心配そうな表情で尋ねてくる



「・・・何故発作が?」

「ああ、たまたま鷹士とじゃれあってたらあの時の状況に似た部分が重なって
相手が鷹士だってこと一瞬失念しちまったら意識が遠のいたんだよ」



いづれは訊ねてくるだろうと思っていたので俺も言葉に詰まる事無く返事を返す
俺の返答にふむ、と考え込むケビン
珍しい光景に首をかしげているとケビンは確認するように俺の顔を覗き込んできた



「・・・タカシさんだということを失念してタんですね?」

「ああ、スカーンと忘れてた」

「でハ、タカシさんだったら大丈夫と、言うことですか?」



ケビンの思いがけない言葉に思考がピタリと止まる
ダイレクトにその言葉を耳に入れて、そのまま脳内でリピートされた

(鷹士だったら大丈夫?)

そんなわけがないだろう、と思わず否定した
今までこれっぽっちも克服の兆しも無く、一生付き纏うだろうと思っていた症状で
ケビン以外の例外など在り得ない
そう結論に行き着くと苦笑いでケビンに視線を向けた



「失念してなくても発作が起きたんだ、大丈夫なわけないだろ」

「・・・そうですか」



そのまま暫く沈黙になってしまいそうになるのが気まずく感じて
即座に話を切り替える



「そうだケビン、この調子だと今回は軽い症状みたいだから
退院できたら明日の夜、俺の部屋に来いよ」

「はい」

「あ、できれば酒買ってきて欲しいなー
勿論鷹士とヒトミには内緒で」

「はい、でハ、私の部屋にあるウイスキーでも持って行きましょう」

「・・・ケビンとジェイって二人して酒豪だもんな・・・」



嬉しそうに返事を返すケビンはジェイ共にかなりの酒豪だ
ちょっとやそっとじゃ酔わない体質なのか
もしくは飲んで直後、体内でアルコールを分解してしまっているのか・・・
チュ−ハイ二缶で酔ってしまう俺としては羨ましい限りで
半目でジトリと睨みつつ、病室の窓に視線を転じた

外は既に真っ暗で

不意に

帰り際の鷹士の表情を思い出してしまった



「・・・」



ポツリ、と
病室の窓に水滴が付いた

鷹士のやつ

なんであんなに泣きそうな表情をしてたんだろう