乙女的恋革命ラブレボ
花一匁 ―はないちもんめ― 40
「鷹士には絶対に言わないでくれよ」
その言葉が一瞬で俺の心臓を貫いた
待機所にケビンさんと看護士さんが居て
ケビンさんは俺を見つけると微笑みながらお辞儀をしてきた
反射的にお辞儀で返して、の事を訊ねる前に
「なら今健診ヲ受けています
もう終わる頃だと思いますヨ」
と、俺を病室に促すようにジェスチャーで病室に促してくれた
その様子で、入室してもいいのだろうと解釈して病室の前まで行ったは良かったのだが
扉を前にして聞こえてきた微かな会話
『酷い傷だな』
『鷹士には絶対に言うなよ』
『・・・何故、に知られたくないんだ?』
『あいつこの傷見たら絶対大慌てするか失神しかねないだろ』
『理由はそれだけか?』
『他になにがあるってんだよ』
この声は
若月先生とだ
『この背中の怪我は発作と関係があるのか?』
『直接関係はないけどさ・・・』
いけない
このままでは立ち聞きをしてしまうことになる
そんなことが知ったらきっと俺のことを嫌いになる
解っている
解っているのに
脚が動いてくれない
『向こうでモデルしてて、そこそこ売れ始めた頃に』
立ち聞きなんてしたくない
俺は、の口から直接話してくれるのを待ちたいんだ
御願いだから、今、言わないでくれ
しかし意図に反して俺が扉の前に居る事に気が付いていないは
俺が聞いてはならないことを口にした
『数人の男に姦されそうになって』
「・・・」
目の前が真っ暗になる、というのはこの事だろうか
手に持っていた見舞いのつもりで持ってきた華が手から滑り落ちてバサリ、と音を立てる
音が立つと同時に俺の様子がおかしいと思ったのか
ケビンさんが廊下の先から大きめの声で呼んだ
「タカシさん!?」
その声に遠目でも解るほどビクリと身体を揺らして
病室の扉が開かれると眉間に皺を寄せた若月先生が顔を出した
扉の前に立っている俺の姿を確認して、更に表情を歪めると小声で
「なんでこんなトコに突っ立ってんだよお前は・・・」
と舌打ちをしながら呟く
俺は無意識に一歩後ずさって
その様子に視線を鋭くした先生は俺の腕をつかんで病室に引き込んだ
その拍子に落としてしまった華を踏んで、それすら気にする暇も無く
ベッドに座っているの姿を目に捉える
後ろで部屋の扉が閉まる音をどこか遠くで聞いた気がした
も俺がここに居る事に驚いているのか
信じられないものでも見るかのように眼を丸くして俺を凝視している
その視線から逃げるように目を逸らした俺は直に後悔した
今のタイミングではまるで
俺がを拒絶したかのように見えてしまったのではないか、と思ってしまったからだ
立ち聞きしてしまった事を後ろめたく感じて、の行動だったのだが
自分がしでかした行動の危うさに気がついて視線を戻しても
既にの目は俺には向いていなかった
顔ごと視線を伏せて、表情が見えない
そのまま暫く続いた沈黙を破ったのは若月先生だった
「、今のの話、立ち聞きしてたのか」
先生の言葉に、表情に力が入る
しかしそれをキッカケに俺はまたに一歩近づいて
とにかく立ち聞きしてしまった事を謝罪をしなければ、と口を開く
「・・・兄ちゃんは」
「出てけよ」
顔を伏せたままのの呟く様な声が部屋に響く
初めて耳にしたの冷えた声色に息を飲んで閉口してしまう
「出てけ」
さっきよりハッキリと聞こえる声
完全に俺を拒絶した言葉
言葉の意味を信じられなくて、信じたくなくてまた一歩、脚を踏み出すと
その瞬間が叫んだ
「ジェイ!!こいつらをつまみ出せ!」
その呼びかけと共に飛び込んでくるように扉を開いて入ってきたSPの二人に
瞬く間に若月先生と共に病室からたたき出された
俺はジェイという人に押し出されるように部屋から追い出された為に
病院の廊下に強かに背中を叩きつけられて小さく呻いた
となりで先生が「なんで俺まで・・・」とボヤいている
そしてケビンさんはに呼ばれていなかったからなのか、病室内に残る事はなく
俺と先生と共に廊下に出て、しかし既に閉ざされたの病室の前に立っていた
背中がズキズキと痛む中、俺はケビンさんを見上げる
視線が交わって、ケビンさんは苦痛に表情を歪めながら、したっ足らずな日本語で
「・・・タカシさん、に何を・・・?」
「・・・」
沈黙する俺の代わりに先生が状況の説明を始める
「の傷や発作についてこいつが立ち聞きしちまったんだよ
で、こういうことになったんだ」
簡単にも拘らず、その先生の説明で僅かに青ざめるケビン
まだ廊下に座り込んでいる俺の目の前で屈んだケビンさんは
眉間に皺を刻んだまま俺に告げてきた
「は貴方にだけは知られたくない、といつも言っていまシた
きっと心配させたくなかったンだと思います、そして・・・」
「・・・」
「は今まで一度だケ、私に言ったことあります
鷹士にだけは拒絶されたくないから、と」
ケビンさんの言葉に目を見開く
しかしそれを告げたケビンは静かに「帰って下さい」と口にした
その言葉に先生は俺の腕をつかんで立ち上がらせると帰るぞ、と廊下の先へ促す
俺は動かなかった
病室の前で微動だにしない俺の様子に先生は肩を押して、もう一度帰ろうと促す
ケビンさんも不思議そうに首を傾げて俺の様子を窺う
・・・帰るわけにはいかない
大切なに誤解をさせたまま帰るわけにはいかないんだ
「・・・ケビンさん、すみません」
そう呟くと同時に俺はケビンさんの腹に拳を叩きこんでいた
不意を突かれたケビンはその場に倒れこんで
突然の俺の行動に「げっ」と声を上げる先生
俺はそのままもう一度病室の扉を開いて、俺の姿にジェイさんも驚いた表情を見せるが
直に追い出そうと巨体を此方に向けてきた
元 ラ グ ビ ー 部 員 をなめるなよ
押して駄目なら引いてみろ
これだけ力の差があれば押しても駄目なのは目に見えている
一発で気絶させようとしている相手の拳の軌道を読んで紙一重で避けると
避けるとは思わなかったのか一瞬体制を崩した所を見逃さずに脚払いをかけて
倒れ掛かってくるジェイさんを避けるとのベッドに走った
当然、も入ってくるとは思わなかったのか、更に驚いた表情を浮かべて
しかしに構う事無くがばっと抱きついて
「ごめん!
兄ちゃんは立ち聞きするつもりはなかったんだ!!それについてはごめん!!
でも兄ちゃんは断じてを拒絶したつもりもなかったんだ!!
さっき思わず目を逸らしたのだって立ち聞きした事を後ろめたく思ってのことだったし
何よりが兄ちゃんに何も打ち明けてくれない事がショックで
それにケビンさんにだってジェイさんにだって嫉妬してた!
に頼られてる存在全部がいやでいやで仕方なかったんだ!!!
このブレスレットだってすっごく嬉しかったのに直にお礼も言えなくて
昨日だってケビンさんがに一日中付くって言うので俺は拗ねてた!!大いに拗ねてた!!!
の背中に傷があることも前から知ってた!今さっき聞いた事は確かに衝撃的だったけど
俺はそんな事ぐらいでを嫌いになんてならないぞ!?
むしろずっとずっっっっっっとお前を守ってやるから!!俺はお前さえ居ればそれでいいんだから!
はだから!俺の大切な大切な存在だから!!
俺が居るからにはそんな怖い目にだって絶対に遭わせないから!!
俺が一生守り続けるから!だから!
・・・だから、のこと好きでいてもいいか・・・?」
がばっ抱きついて一頻り叫んで
それでもの顔が自分の肩にあって表情が見えないのが不安で
顔が見たくて
でも拒絶の眼差しが自分を見据えていたらと思うと中々行動に移せなくて
それでもこの問いに関する回答を得るためには絶対にの視線を畏れてはならない、と
恐る恐る身体を引いての顔を覗き込んだんだ