乙女的恋革命ラブレボ
花一匁 ―はないちもんめ― 42
「先輩、お早う御座います」
「おはよ」
「先輩!おっはよ−っ!!」
「はよ」
10月、学校が衣替えを迎える時期が到来した
9月の体育祭は発作のお陰で休む事になった
その後の朝、校門を過ぎた所で後ろから呼びかける声が
いつもの如く一年組みの二人が小走りで俺の元に歩み寄ってきた
元気に声を上げるのは颯大
「うわー!先輩冬服可愛い!!!」
(・・・可愛い?)
颯大の見た目感想に僅かに首を傾げて改めて自分の身形を見てみる
なるほど、腰のベルトにピンクの花のベルト
ついでに黄色のチェーンをしているのが可愛かったらしい
ちなみにチェーンにも花の硝子細工が施されていて高価であることも一目瞭然
ああ、これか
と手に触れて颯大を見れば
「それじゃないよー、それも勿論似合うけど袖袖!」
「袖・・・?」
袖を見てみれば
なんら変わりない袖・・・ただの袖だ
はぁ?と首を傾げつつもう一度颯大を見れば今度は剣之助が話しに入ってきた
「深水って何気にそういう部分好きなんだな・・・」
「え!?剣之助はこういうの可愛いとか思わないの?」
「あ、いや・・・まぁそれなりに・・・」
俺の目の前で俺の知らない話をするのはよしてくれ
そう思っていたのが解ったのか、颯大は更に詳しく説明を始めた
「先輩の袖、指先が見えるぐらいに長いでしょ?」
「ああ、鷹士のお古だから」
「その袖の長さが可愛いって言ってるの!!」
「・・・あ、そぅ・・・」
妙にマニアックだな、という意見はあえて飲み込んで
朝方の鷹士とのやりとりを思い出した
「―――――!!朝だぞぉ――――!!」
「朝からやかましぃ!!!」
突然の鷹士の部屋来訪に丁度着替えていた俺は不機嫌な表情のまま
負けず劣らずの大声で返した
朝は低血圧で暫く気分悪いんだよ俺は
この間の俺の返答に随分調子に乗っている様に見えて
鷹士のニコニコ面を呆れた表情でみやる、が
俺の手によって負傷した頬にはまだシップが貼られている
丁度俺が見える位置まで来た鷹士は途端に表情をなくして直後
真っ赤になって慌てだした
俺の上半身裸下半身パジャマ状態に含む所があるらしい
「!!なんて格好を・・・ってああ違う!!今日は衣替えらしいから冬服持って来たぞ!!」
「冬服・・・」
鷹士の腕にはクリーニングしたてらしい学校の冬服が抱えられていた
ありがたくそれを受け取ってのろのろと着替え始めた
「お前なぁ、たまにはまともにネクタイぐらいしろよ?」
白いYシャツを着込んだ時点で真紅のネクタイを俺の首に回してきた鷹士
俺の手首を視界に捉えてはぁ、とため息を一つ
「全く、ホラ、シャツもちゃんと前を止めて・・・
アクセサリーも確かに似合ってるけど校則違反だろう?誰も注意しないのか?」
「いいだろブレスレットぐらい、颯大だってネックレスしてるし」
「時々ぐらいちゃんと着てもいいじゃないか、折角の学生ライフなのに」
「・・・鷹士、自分で着れるから」
「ん?そうか?着崩すなよ?」
このままだと執事がしそうな主人の着付けになってしまいそうだ
鷹士は「飯が用意出来てるから早く来いよ」と告げて部屋から出て行く
それを見届けてのろのろと上着を着込んだ所で気がついた
「・・・でかい」
サイズが全然あって無いじゃないか、と袖の長さ、裾の長さに密かにため息をつく
それでも自分よりガタイが大きいらしい鷹士にやっぱり兄貴なんだなぁと思って
今後寒くなるなら多少でかくても問題ないか、と朝食を食べてヒトミより先に学校に着いたのだ
「・・・先輩、顔がニヤけてるんスけど」
「ぅっ」
「ソレ、鷹士さんのお下がりっスか?」
「ま、まぁな」
「へぇ・・・そうスか、鷹士さんの・・・へぇ・・・それでご機嫌なんスね」
「・・・あー、さっさと教室行かないとなっ!じゃあな二人とも!!」
なんなんだ、なんか剣之助の目がすわっているように見えるのだが
剣之助が妙な威圧感を出してきたのでそそくさとその場を逃れて教室に向かう
しかし油断した
思わずそのまま昇降口に向かってしまってそこではっと気が付く
そうだ、俺は今日久しぶりの登校
一週間ほど休んでいたのでファンの存在をとんと忘れ去っていたのだ
「きゃぁぁあああああ様だわー!!様が登校してきたわよ――――!!!」
「王子―!一週間ぶりの生王子よ!!!」
「様!一週間も休んでどうしたんですか!?」
「モデル再開したんですか!?」
「おべんとう毎日作ってるんです!!今日こそ!!!」
「様の冬服姿よ!!写メ写メ!!!」
昇降口に 数 十 名 の 女 生 徒 が
いつもなら裏口で教室に向かうのだが失敗した、なんで表から堂々と足を踏み入れてしまったのか
お陰で逃げ回ってる所為で更に数十名のファンを引き連れて校内を爆走する羽目になった
遠目に華原やヒトミが登校しているのが目に見えて俺の眼光が鋭く光を放つ
ちゃ〜んす
とばかりに華原に向かって突っ走る俺
遠目にも俺の意図に即気が付いた華原だが俺の状況に表情を歪めつつも
「無事に教室にたどり着く」しかないと判断したらしく
強引にヒトミを引き連れて俺と共に三人で教室まで全力疾走する事になった
半ばヒトミを引き摺る形になったが左右に俺と華原が居た為にヒトミの両腕をつかみ上げて
殆ど宙に浮かせた状態で階段を駆け上っていた
ファンの手を逃れて教室についた俺と華原、そしてヒトミ
ヒトミは俺たちほど息切れを起こしていないようで、しかし華原は恨みがましそうな視線を俺に向けてきた
「・・・まったり登校してる俺たちの平和を壊さないでくれる?」
「悪い悪い、久しぶりでつい裏から入るの忘れてた」
「昼休みジュース一本おごりでチャラね」
「りょーかい」
華原と何時もの会話をしていると幾分か遅れて廊下が騒がしくなる
廊下では女生徒の残念がる声が沢山聞こえてきて
その声に華原が眉間に皺を寄せた
「ったく、許可無く写メとか撮るんじゃねぇよ・・・
あーゆー女デリカシー無いっていうんだよな」
「か、華原くん・・・?」
滅多に見せない華原の表情にヒトミが戸惑っている
それに気付いた華原は一瞬バツの悪そうな表情を俺に見せてすぐにヒトミに笑顔を向けた
そんな様子に自業自得だ、と我関せずな態度で席に着く
しかし確かに華原の言うとおり、勝手に写メを撮られたりするのは気分の良いものじゃない
俺のようにモデルで飯を食ってる立場からすれば迷惑この上ない行為なのだ
廊下側の窓から携帯のカメラを向けてくる女生徒の数名から顔を隠すように
カバンにいれていた下敷きで、仰ぎついでに撮られないようにする
全力疾走していた所為で、鷹士に整えられたネクタやシャツを着崩して直隣に窓を開ける
衣替えの時期なだけに涼しい風が入り込んできた
そんな涼しい日の下校時刻を過ぎた日も沈みかけている夕方
マンションの前まで帰ってくるとマンションの前にケビンとジェイ
そして見慣れない数名の男が立っていて、傍には高価な黒の外車
俺の姿を確認したケビンが手招きをしていたので
小走りで駆け寄ってみた
「ケビン?どうしたんだこんな所で」
「、私たちの契約事務所の社長がお見えになってます」
「社長が?」
どうやらマンションのホール内にある待合室で待たせているらしく
ケビンとマンションの中の待合室に向かう
部屋に入ってみるとそこにはマンション管理人の鷹士が
社長らしき人物と対面して席に座っている
鷹士と対面している男の両脇には付き人のような二人の男が立っていた
俺が部屋に入ると同時に席を立って軽く会釈をしてくる男
「さんですね」
笑顔で挨拶と握手を求めてきた男は名刺を差し出して
名刺の文字から所属している会社の日本事務所の社長であることが伺えた
俺の所属会社に日本への事務所展開は無かった筈なのだが
ケビンの話からすれば約一ヶ月ほど前に新しく契約を交して
日本でも雑誌を出す事になったらしく、そこで丁度モデルを休業していた俺に
そのまま日本でも活動できるようになったことを知らせに来たことと
事務所でモデルを再開しないかという誘いも兼ねて訪問してきてくれたらしい
既に海外本社とも連絡を取り合っているようで、了承も得ているということだった
「あなたを日本の雑誌の目玉として売り出せば高い利益も得られるでしょうし
最近の日本の若者もファッションには関心がある、モデルだけでなくCMにも出演できるでしょう
活動の幅も広がりますよ」
・・・最もな意見なのだが海外でもCMのオファーはあった
それをことごとく蹴ってモデル一本で活動していたのだ
しかし今仕事を始めれば今の生活を続けるのが難しくなる
マスコミで俺の存在が露呈した時だって警察沙汰になるほど酷い有様になったのだ
また近所に迷惑をかけるとなると鷹士やヒトミだって面倒な事に巻き込まれかねない
特にヒトミ
最近では痩せて、見違えるほど綺麗になっているヒトミの存在が俺と双子である事でもバレれば
目の前に居る社長は当然それについても話を持ちかけてくるだろう
それに元は暫く休養するつもりで日本に帰ってきていたのだ
そして鷹士にも以前、「もう海外に行くのは許さん」的なとこを言われていたことを思い出す
数分間悶々と考えて結局「考えさせてください」という返事で打ち切る
会社の人たちが帰った後、暫く部屋で仕事について考えていると
不意に、部屋の扉を叩く音に顔を上げた