乙女的恋革命ラブレボ
花一匁 ―はないちもんめ― 44
「文化祭ぃ〜?」
昨日のキスの一件以来鷹士を意図的に無視し始めて一日目
夕食の時にヒトミから11月20日の文化祭についての話が出てきた
「うん、私は演劇部の裏方なんだけどは何かしないの?」
「そうだな・・・特に予定はしてないけど?」
「そっかぁ・・・って帰宅部だもんね・・・いいなぁ
集中的にお店回れるんだぁ・・・いいなぁ・・・」
「ヒトミの演劇部の仕事が終わった頃に差し入れでもしに行くよ
とりあえず烏龍茶と焼きそばとデザートのプチケーキで
・・・サービスで串焼きもいるか?」
「勿論いる!やった、流石!私のこと良く解ってる!!」
俺とヒトミが楽しく会話をしている中、そわそわと俺に視線を送る隣の主
ヒトミは俺と会話しながらも俺の隣の行動が気になるのかチラチラと視線を送りつつも
俺とその存在の問題だと判断しているらしくあえて視線を送るに留まっているようだ
「お・・・お兄ちゃんは残念だけど大学の教授の手伝いで行けないんだよなぁ」とか
何気なく話しに加わろうとする鷹士、そして聞こえないかのように振舞う俺
「ところでヒトミ、颯大が主役って本当か?」
「あ、うん!スッゴイ可愛いんだよ!!も見にこれたら来てね!!」
それでも食い下がる鷹士
「そういえばあいつヒトミと同じ部活だったんだな
ヒトミ!あいつはダメだぞ!?勿論もだぞ!?」
「・・・お兄ちゃん、なんの話をしてるのかわかんないんだけど」
無視をされても食い下がってくる鷹士に一応話が振られたヒトミは相手をする
勿論俺は無視
そんな俺の態度に海よりも深く沈む鷹士
それを見ておろおろとするヒトミ
食事が終わってソファで寛ぐ俺の隣にヒトミが腰を下ろしてきた
隣に座るヒトミを見て鷹士がどこに居るのか背後に振り返って
どうやら台所で洗い物の片付けに励んでいるらしい
ソレを確認すると神妙な面持ちのヒトミに向き直った
「なんだよ」
「あんまりお兄ちゃん虐めちゃだめだよ」
「あんな非常識な男なんぞ知ったことか」
「もぅ、また喧嘩でもしてるの?良かったら事情、聞こうか?」
ヒトミの心配そうな顔が俺の視界を覗きこんできて
最近特に綺麗になってきたなーとお門違いな事を考えて
後、深いため息をつくと疲れきった表情でヒトミを見た
「ヒトミ」
「うん?」
「お前さ、気になる人が突然キスしてきたとして
ムードもそこそこ、両思いで邪魔者も無し、シチュエーションも完璧で
言うこと無しの状況なのにキスだけでその場を済ませる人ってどう思う」
「うーん、場の空気も読めないデリカシーのない人だと思う」
「だろ?・・・ったく鷹士の野郎・・・空気が読めないにも程がある・・・」
「・・・」
「・・・」
「・・・」
「・・・どうしたヒトミ?」
俺の呟きに大口開けて呆けているヒトミ
なんなんだと訊ねた瞬間
「ぅそぉぉおおおおおおお!!!!!!!!!
お、お、お、お兄ちゃんってばもしかしてその彼女とそんな雰囲気になったっていうのに
が言うような状況で終わって折角出来た彼女に振られちゃったとか!!!!?????」
「・・・は?」
「ってばそういう場面に出くわしちゃってその一部始終を見ちゃったんだ!!
ぅゎー、そりゃ彼女さんだって怒るよ・・・!!」
「・・・へ?」
「そ、それで!?それでお兄ちゃん振られちゃったの!!???
折角できた彼女なのに振られちゃったの!?折角弟妹離れしたと思ったのに!!」
「ぇーっと・・・ヒトミ・・・?」
「もぅ、お兄ちゃんってば・・・!そういうところ鈍感なんだから!!」
「ああ、それは同意するけど」
ちょっとまて彼女ってなんだ
そこまで考えてはっと思い出す
そうだ、ヒトミはあの保健医から女装した俺が鷹士の彼女だと勘違いしたまま
ヒトミに鷹士の彼女が存在することを聞かされていたんだった
ということは俺はそれすら忘れて本気のぼやきをヒトミに伝えたことになる
・・・果たしてこの勘違いは幸か不幸か
とりあえずヒトミが鷹士の彼女の話だと勘違いしてくれて助かった
それが無かったらヒトミも妙に鋭いから何か勘付いていたかも知れない
俺と鷹士は家族、しかも兄弟、更に言えば男同士
危ない、非常に危ない
一流モデルの俺からすればスキャンダルまっしぐらだ
しかし雰囲気に流されたとはいえ俺も実の兄からの口付けを許すとは
鷹士の余りのブラコン波でどうかしていたのだろうか
ヒトミは悲しそうな表情で地面に視線を向けてしまう
「で・・・やっぱりお兄ちゃん振られちゃったのかなぁ・・・」
「・・・俺は鷹士が殺されそうになる所までしか見てないから解んねぇけど」
「こ、殺される!?そんなに怒ってたんだね彼女さん・・・」
俺は嘘はついてない、ついてないぞ
今度こそベランダから突き落として殺そうとしたのは確かなのだから
勿論本気で落とすつもりではないのだが
流石にあれは反省してほしい
半端に俺を煽っておいてアレで終わらせたのだから当然の報いだ
「でも、さ、もそろそろ許してあげようよ
お兄ちゃんもしかしたら振られて傷心の身かもしれないし
・・・でもそういうのって・・・やっぱり同じ男として許せない?」
「あったり前だろ!?あんなに良い雰囲気でキスだけだぞ!?
許せるかそんなの!!しかも微妙に煽っておきながら・・・!!!」
「・・・?」
ヒトミの疑問の声が上がる
(うっ!ヒトミが微妙に疑惑の眼差しを向けてる!!)
思わず思い出して熱くなってしまったのを取り繕うように
即座にヒトミに顔を向けて力説
「か、か、か可哀想じゃねーか ・・・ 彼 女 が !!!」
「うん、そうだよね・・・」
良かった、なんとか誤魔化せた
しかし結果ヒトミに嘘をつくことになった自分が心苦しい
流石に自分が鷹士と妙な関係になり始めている事は口に出来ないのだ
それでなくとも体の事云々で色々隠し事も多いというのに
心の中で頭を抱えてブリッジする
そんな時
「なんの話で盛り上がってるんだ?兄ちゃんも仲間に入れてくれよ」
タオルで手を拭きながら鷹士が声をかけてきた
ヒトミも俺の話しで大体把握したらしくキッと鋭い視線を鷹士に投げかける
その視線にたじろいだ鷹士は「どうしたんだ?」と苦笑いで首を傾げるが
「お兄ちゃん、私
デリカシーがなくて空気が読めない男の人嫌いだからね?」
「何!?そんな最低の男がヒトミの近くにいるのか!?」
早速空気を読んでない人が一名
しかもヒトミの近くに居たりする
鷹士は身を乗り出してソファの背もたれに手を突くとヒトミに向かって顔ごと迫った
そんな反応に呆れた表情を見せたヒトミはもういい、とため息をついて自室に向かった
「、おやすみ」
「おやすみヒトミ」
「ひ、ヒトミ!!お兄ちゃんにはないのか!?おやすみの挨拶・・・!」
必死に挨拶をせがむも、鷹士がそれを言い終わる前に
無常にも扉は閉ざされ、その扉に伸ばされた鷹士の手が虚しく宙を掻く
「ひ、ヒトミにまで無視された・・・!!」
悲痛な涙声を上げる鷹士にちょっと胸が痛むが
手を突いていたソファに顔を埋めてそのまましょげる体勢に入っていまうのを見届けて
さて俺も寝るか、と気にも留めずに腰を上げたその時だった
が し り 、と
服の裾を引っ張られて腰を上げたソファにまた腰を沈める
嫌そうな視線を隣に向ければ案の定
俺の服の裾をしっかりと握っている鷹士の手が視界に入った
同時に顔を覆っている片腕の隙間から恨めしそうに俺を見る視線
稀な視線に思わず緊張してしまう
それに気がついていないらしい鷹士はヒトミの変貌に俺が関係していると踏んだのか
確信の眼で訊ねてきた
「・・・ヒトミに何か話しただろ、」
「本人が言ってただろ、空気が読めないノンデリカシーの男は嫌いだって」
「そ、それ・・・俺のことだったのかぁヒトミぃぃぃ〜〜〜〜・・・」
「・・・」
俺の真横で酷く落ち込む鷹士を見て
ふと疑問に思ったことを訊ねてみた
「鷹士ってさ・・・俺とヒトミ、どっちが大事なんだ?」
「昨日言っただろぉ?の方が大事だってぇぇ・・・」
顔を伏せたまま泣き声で即答
そういえば昨日そんなことをさらりと言われたような気がしないでもない
しかし目の前の余りの鷹士の落ち込みよう
ちょっとばかりムっとして意地悪な質問に切り替えてみる
「じゃあ鷹士、俺とヒトミが同時に死にそうになって
どちらか一方しか助からない、そういう状況になったらどっちを助ける?」
「そんなの決まってるじゃないか」
ニヤリと人の悪い笑みを浮かべる俺
即座に鷹士が顔を上げて俺を見る
冗談のつもりだった
本当に真剣な返答なんて期待していなかったのに
それでも答えは俺を助ける、と言うものと
心のどこかで知った風な気持で居たのかもしれない
「ヒトミを助けるに決まってるだろう」
一瞬
心臓が締め付けられたように痛んだのが解った