乙女的恋革命ラブレボ



 ―はないちもんめ― 47









「おはようヒトミ!あ、ちょっと新聞取ってきてくれるか?」

「うん!ついでにコンビニで牛乳も買ってくるね!」



そう告げて私は部屋を出ると制服を着たままコンビニに入る
目的の牛乳を手にとってレジに向かう途中週刊誌が目に留まって
その週刊誌の表紙に見知った文字の羅列を見つけた
レジに牛乳を置いてその脇に積まれている週刊誌の一冊を手に取る

その文字の羅列を読んで、ヒトミの表情はみるみる内に驚きへと変わって



「・・・え?・・・ええええええええ!!??」



朝のコンビニでヒトミの叫び声が木霊した



「ふんふんふ〜ん」



鼻歌を歌いながらフライパンをひっくりかえしてホットケーキを焼く
朝食を用意している鷹士はご機嫌な様子で
それというのも昨日が無事に帰ってきてくれたこと
白のフリルつきエプロンをリズミカルに揺らしながらホットケーキを皿に移すと
それをトレーに乗せてテーブルまで運ぶ

(よしっ少し休憩!)

あとはヒトミが来るのを待つだけだ
はいつも早めに学校に登校する為
既に弁当と朝食を持たせて見送った後だった
と冷蔵庫から冷水を取り出してカップに注ぐとそれをぐいっと傾けて水を飲み干す



「お兄ちゃん大変大変大変―――――――――――――!!!!!!!」

「ぶほっっげほごほ!!」



バターンとでかい音をたてて扉が開かれると同時に
ヒトミが酷い形相で駆け込んできた
突然の音に驚いてむせ返ってヒトミに顔を向ける



「ど、どうしたんだヒトミ!!」

「どうしたんだじゃないわよ!これ!これ見て!!」



バサっと目の前に広げられた本
そのページに載っている画像を見てヒトミからその本を勢い良く取り上げると
信じられない表情で見る



「某国トップモデル 『  』
セントリーフスクールの同学年クラスメイト、イケメンのNo'2と熱愛発覚・・・っ!?」

「し、信じられないけどこの画像ニセモノじゃないよね!?
き、き、キス・・・してるし」

「これはぁ・・・か、か、華原じゃあないかぁ・・・」

「お、お兄ちゃん・・・?」

「よりによって・・・よりによってあんな・・・あんな・・・あんなぁ・・・」

「お兄ちゃん?」

「あぁんんなぁぁ二面性のはげしぃぃ・・・っ馬の骨にぃぃ・・・っっ!」

「お兄・・・」



徐々にヒトミは後ずさる
買ってきた雑誌は鷹士の手の中でしわくちゃになっていて
なにより顔がやばい

非常にやばい

流石のヒトミも危なすぎて近づけない雰囲気全開で
フリフリのエプロンをつけたまま、何を思ったのか突然がばりと顔を上げると
そのまま玄関に向かう



「おっお兄ちゃん!?」



慌てて後を追えばそのまま玄関から出て行くではないか
しかもスリッパで、更にエプロンをつけたまま非常に危険な表情のままで、だ
もしや華原の部屋に殴りこみに行くのではなかろうかと思い当たって
兄の目の前に立ち回るとその身体を押し留める



「お兄ちゃん落〜ち〜着〜い〜てぇぇ〜〜〜っ」



しかしダイエットをしているヒトミは今現在66キロ
ここまで痩せたヒトミが鷹士を止められるはずも無く
鷹士はヒトミの静止を振り切ってそのままマンションから出て行ってしまった



「どっ・・・どうしよぉ・・・」



ヒトミは鷹士の背中が小さくなっていくのを見ながら
呆然と立ち尽くしていた










「雅紀」

「何?」

「なんだよその嬉しそうな顔は」

「んーこれで晴れて公認かなーって」

「・・・」

「『イケメン二人の熱愛!』だってさ」



学校について一番最初に目に入ったのは校外掲示板だった
そこにセントリーフの新聞部が張り出したらしい記事と、号外!!という力強い文字
そして、やはりと言うべきか先日の雅紀とのキスシーンの写真が張り出されていた
朝早かった所為か、その掲示板に野次馬がたかり始める前に学校に着いて
マジマジと記事を読む雅紀の前に出ると、張り出されている記事を剥ぎ取って丸める

(便所に流してやる・・・)

ギリっと握ってどうするか、と本気で悩み始めてしまった
こうなると事務所にも影響があるだろうし、まず本社のお偉いがたが黙っていないことだろう
無意識に眉を寄せて、顎に手を当ててしまう
俺の様子を傍らで見ていた雅紀はボソリと小さく呟いた



「・・・そんなに嫌?」

「は?」



思わぬ問いかけに素っ頓狂な声を上げてしまって
雅紀に顔を向ければ少し悲しいような、傷ついたような、苦笑い
俺の返答を待つ前に昇降口に脚を向けて、その様子に俺は慌てて雅紀の後を追う
歩きながらも雅紀を誤解させないように言葉を選んで



「いや、そんなんじゃなくてだな
こんなことになったら本社の方にも影響あるだろうなと思って・・・今後の対応悩んじゃってさ」

「あ、そっか
は仕事の関係もあったんだよね・・・うーん、それを考えると確かに深刻かな」

「・・・あのな」

「あはは、ごめんごめん
学校内だけなら上っ面公認でもいいかなって思ってたけど
世界規模になったら流石に責任強いかなって」

「・・・そうなんだよなぁ・・・俺業界じゃクールで通ってるし・・・
この写真、俺のクールの欠片もないからなぁ」

「よく見れば薄暗いし、フラッシュも距離が遠かったから・・・」

「・・・」

「巧く行けば・・・」

「誤魔化せるかもってか?」

「うん、プロの合成屋さんの仕業ってことにしておく?」

「TV云々は雅紀に任せるぞ、こうなったのもお前の責任なんだから
ソレぐらいしてもらわないと割に合わないだろ」

「・・・ん、りょーかい!ちゃんとなんとかしておくよ



会話が終わる頃には丁度教室についた所で
俺は先に教室に入って後で入ってきた雅紀が扉を閉める
やはり朝も早い所為か教室には俺と雅紀の二人しか居なかった
窓際の席についてカバンを横に掛けると席につく
そこで雅紀が自分の席にカバンを放り投げるとさっさと俺の目の前の席まで来て
椅子を引くとそれに跨り俺の目の前に顔を構える

早速曲でも聴きながら本を読もうとしていた俺は
目の前のニヤニヤした表情が気になってつい話しかけてしまう



「・・・何」

「よくよく考えればちょっとキツイかなーって」

「何がだよ」

「マスコミの相手を1人で一手に引き受けるの」

「自業自得だろ」

「過労死しちゃうよ?俺」

「俺にとっては願ったり叶ったりなんだけど?」



ニヤリと人の悪い笑みを浮かべながらそう告げてやれば
「うわっヒドっ」と非難の声
しかしよく考えれば一応一般人の雅紀にはマスコミの対処など初心者同然で
結構体力を使うだろう事は目に見えていた
仕方が無い、と思うとつい深いため息をついてしまって
諦めたように雅紀に眼を向けた



「・・・で?何か俺に手伝って欲しいことでもあるのかよ」

「お、流石話が解るねちゃん」

「しばくぞ」



ちゃん付けされた俺は不機嫌を露にピクリとコメカミを動かす
雅紀はどぅどぅ、と俺の怒りを治めつつ、人懐っこい笑みでぐっと顔を近づけてきた
次に口を開いた雅紀の声色は、どこか弾んで聞こえるのは気のせいだろうか



「疲れたら充電させてくれるって約束してくれたら俺頑張っちゃうよ」

「充電?」

「そうそう、こんな感じに・・・」



言いながらゆっくりと近づいてきた雅紀の様子に
瞬時に「充電」が何を意味するのか理解できて即座に自分と雅紀の顔の間に手を通そうとして
しかしその行動は、今雅紀が起こそうとしている行動をも硬直させてしまうほどの呼び声に遮られた



――――――――っっ!!!!!!!!!!!!」



突然校庭から聞こえてきた聞き慣れた声
その声に動きを止めた俺と雅紀は青ざめつつ、小さくユニゾンした



「「・・・まさか」」



俺たち二人は慌ててベランダに出て校庭を見下ろす
すると校庭の中心辺りに1人の人影

フリフリのエプロンに、明らかに室内用の兎のスリッパ

なんともおかしな格好をした俺の兄、鷹士の姿だった



「・・・っ・・・っ」



余りの事態に我が目を疑うかのように目を引ん剥いて校庭を見る
更にタイミングが悪いことに校門辺りにマスコミが集まり始めているところで
俺は生まれて初めてとも言える全力疾走をして
走ってきた俺にもみくちゃになった雑誌らしきものを指差して何かを訴えようとした鷹士を
有無を言わさぬ勢いで校内に連れ込むと
雅紀に後を任せてさっさと校内を通って裏門からマンションに急いだ