乙女的恋革命ラブレボ



 ―はないちもんめ― 48









きっと


その時俺は冷静じゃなかったんだ


だからあんな酷い事を言って


一番傷付けたくない人を傷つけてしまったんだ








「んのバカ!!わざわざこんなトンチンカンな格好で
学校に押しかけるアホなんて世界中ドコ探してもアンタだけだぞ!!!」



今居る場所は鷹士の部屋
朝が早かったのが功を奏したのかなんとかマンションまで帰ってくることが出来たのだ
マンションに入ったところで慌てた顔をしたヒトミにその場で「今日は休む!!」と告げると
学校に向わせて俺はそのまま鷹士の腕を引っ張って鷹士の部屋までズカズカと向かって
部屋を明けさせると乱暴に実の兄を部屋に放り込んで部屋の中心に正座をさせると
その目の前の低いテーブルにドカっと腰を下ろして今し方の暴言を叩き付けたのだ

今だ手に握られているしわくちゃの週刊誌をチラチラと見ながら
「だって」とか「でも」とかボソボソ呟く鷹士



「今日は普通通りに学校に登校して皆にその記事はデタラメだってことを
雅紀と公言する予定だったのにその予定を狂わされたし!
俺が今日休んだなんてことになったら余計に信憑性増しちゃうだろ!?
ソレぐらい解んないのかよ!」

「で、デタラメ・・・なのか?これ・・・」

「当たり前だろ!なのに学校まで押しかけてきて・・・
しかもそんな格好で・・・!」

「でもこの写真どう見たって本物だろう!?
昨日だって華原と帰ってきてたじゃないか!!
兄ちゃんは許さないぞ!?華原となんて認めないからな!」



一方的な言葉に流石に頭に血が上る
誰の所為でここまで全力疾走して汗だくになってまでこの場にいるのか
鷹士は俺の目の前に問題のページをガバっと開いて見せてくる
同時に目の前に来た雑誌をバサっと取り上げるとその辺にぽいと投げ捨てて
無言で鷹士を睨み続ければ、うっと表情を歪める鷹士
しかしそれでもやはり信じていないのか更に続ける



「お前はトップモデルとしての自覚があるのか?
こんなことをして、回りに騒がれるのは解ってただろう
兄ちゃんに仕事のことを話さなかったこともそうだが
なんでも1人で決めようとするんじゃない!仕事はしててもまだ子供なんだからな!」

「・・・」



朝っぱらからこんなに疲れたのは初めてではないだろうか
荒い息を整えながらもこの苛立ちを止める気は毛頭無い
発作で入院して鷹士に色々引っ掻き回されて、退院できたかと思えば鷹士の所為で
色々引っ掻き回されて、学校に登校し出してからまたも鷹士に色々引っ掻き回されて



「それもこれも・・・!全部!全部鷹士の所為じゃないか!!
俺の周りをいっつも引っ掻き回して・・・!くだらない誤解とか仕事の事だって・・・!」

「っ、

「人の許可無く来なくて良い所まで平気で土足で踏み込んできて!
そんな記事がなんだよ!俺と雅紀が何かあったからって
鷹士になんの関係が有るって言うんだ!?余計なお世話なんだよ!!!」

「俺は・・・!」

「ああそうだよ雅紀とキスしたよ!でも鷹士にそんなの関係ないだろ!?
俺はもうガキじゃないんだ!ほっといてくれよ!いい加減兄貴面するな!!!」

「!」



鷹士はいつもそうだ
何かしらにつけて「兄ちゃんは」と言う
そんな義務感、俺にとっては鬱陶しいだけだった
一通り言いたい事を言い終えた俺は鷹士の目の前で長い深呼吸をするとテーブルから立ち上がる
鷹士の顔を見る事無く身を翻して部屋の扉を視界に入れる



「今日はもう休む」

「・・・っ」



背後で正座しているであろう鷹士にはき捨てるように言って
鷹士が何かを言おうと息を飲んだのが解った
しかし結局何も言う事無く鷹士の沈黙は保たれて
俺はクギを刺すつもりで更に告げる



「・・・顔も見たくない」



それだけを言い終えるとそのまま玄関に向かって
扉を開けると扉の横に、壁に背を預けて待っているケビンの姿が視界に入った



「・・・ケビン」



消え入るような声で告げて
俺の声にケビンが伏せていた目を開けると同時に鷹士の部屋の扉が閉まる
俺は衝動的にケビンの腕に飛び込むとそのまま背に腕を回して抱きついた



「・・・今日は学校休む」

「はい」

「汗だくだし、風呂も入りたい」

「はい」

「ジェイは?」

「華原さんのヘルプを」

「・・・気が利くね」

「当然です」

「部屋、行こっか」

「・・・宜しいんですか」

「知らないよ、あんな過保護兄貴なんて」



鷹士の話が出ると同時にケビンから離れると自室への廊下を歩く
今日はそのままケビンと部屋の中で一日を過ごした











「・・・ひでぇ顔だな・・・お前」



二日酔い以上に酷すぎる、と
たまたまマンションの談話室で鉢合わせた不真面目教師の最初の一言だった
続いて当然のように「何があったんだ」と詮索する質問

俺は勿論、話す気になんてなれるわけがなかった

無視するように談話室のソファーに腰を沈めたまま
深く長いため息と共に肩を落として項垂れる
今彼の相手をする余裕すら無いのだ
質問を無視された男はさほど気にした様子も無く暫しの間を置いて
断り無く隣に腰を下ろすと目の前のポールフィンガーにタバコを持った手を置いて
慣れた動作でその灰皿に灰を落としていた

反復するようにまた口にくわえたタバコをそのままに
俺にチラリと向けられた視線と共にまた話を切り出す



「とうとう彼女にでも振られたか」



その言葉に僅かに思考を巡らせて
似たようなものか、と更に肩を落としたところで悟ったらしい男は
「マジか」と驚いた声を上げて顔を覗き込んできた



「お前がそれほど凹む相手なのになんで振られてんだよ
ってどうせ弟妹が原因なんだろうけどなぁ・・・」

「解ったように言うな」



ボソリ、と
不貞腐れた声で告げればおや、と目を瞬かせる男



「解って当然だろ?身内にばっかり愛情注いでたお前が
本当に他人が好きなんだってことを認められずに
弟妹を理由に逃げて結局フられたってこと位」



いい加減弟妹離れしろっつの、と言われて
つい10時間ほど前に弟に言われた似たような一言を思い出してしまって
更に自分の身の上に岩が圧し掛かってきた感覚を受ける
そんな様子に気がついていないらしい男は更に続けて



「ま、お前もそれほど彼女のことが好きじゃ無かったってわけだ
弟妹に勝る相手かと思ってお前にもとうとう春がやってきたと思ったんだがなー」



その言葉にカチンときた



「それほど好きじゃない相手ならこんなになったりしないだろ!
俺は本気で」

「そいじゃお前、逃げてるだけだろ」



勢いで腰を上げると叫びかけて
突然ピタリと口元に指先を突きつけられて思わず口篭る
遮るように告げられた言葉に解らないと表情を顰めれば



「お前は弟妹って存在に逃げてんだよ
自分が異性として他人に愛情を注ぐことに躊躇ってるんだ
恋人として、伴侶として、その気持ちを認めるのが怖くて兄貴って立場に逃げてるだけだろ
俺にはそう見えるけどな」

「!」



その言葉に、俺はやっと気がついた気がした
その何かは解らないけど、でも見つけることが出来た気がした
目の前の男は俺が本当は誰に対して悩み、落ち込んでいるのかを知らない
なのに彼は言い当てたのだ

正しくそれこそが



家族としての、肉親としての 『 一線 』 であることを



今の俺には理解する事が出来なかった

ただ、キッカケをつかんだ気がしていた

俺の何かに気付いたような表情に満足そうに笑みを見せた男は
俺の背中をポンと叩いて



「おら、まだ間に合うだろ、さっさと仲直りしてこいよ
帰ってきたらブラコンシスコンの卒業パーティでも開いてやるからよ」

「・・・若月先生」



そうだ、俺はを弟としてではなく



1人の男として接すれば良いのだと



そんな心構えを教えてくれた若月先生にこの時俺は凄く感謝の念を抱いていた
誰だって今時ほどに成長を遂げて
しかも他の学生と違って仕事までしてお金を稼いでいるのだ
そういう点では大人となんら変わらないのではないか、と
つまりは自分に弟ではなく1人の男として接して欲しかったのだと
少し寂しい気もするがそれを本人が望んでいるのであれば
俺は快くそれに応じようと思う
そこまで結論を導いて俺はよし!と拳を握って若月先生に笑顔を向けた



「有り難う御座います若月先生!お陰で仲直りできそうだ!」

「おう!頑張って来いよ!!」



実際の悩みの種である人物がであると露知らずな若月龍太郎は
彼の役に立てた満足感一杯に走る背中を見送る
しかもに好意を寄せていた龍太郎は当然鷹士の恋愛も応援する
これで障害が少しは減った、と思っていたのだ
巧く行けば今回の事を貸しに、と良い仲になった時に
事を円滑に運ぶ為にそれを持ち出せるのだ

しかし後に

鷹士の背中を押すような発言の数々を後悔することになる



「・・・ん?それにしても鷹士の奴・・・なんでエレベーターに乗ってんだ?
彼女・・・マンションの中に居んのかな」


『 敵に塩を送る 』

そんなことに気付くのはまだまだ先の事である