乙女的恋革命ラブレボ



 ―はないちもんめ― 49









果たして

鷹士の解釈はとの距離を縮めたのか

それとも引き離したのか








何事かとは思った

顔も見たくない、と告げてその日の夜
否、ヘタをすれば夜中に差し掛かるとも限らない時間での招かれざる訪問
時計の針は11時30分を回っていた



今から5時間前

下校時刻が少し過ぎた頃にマンションに帰ってきた雅紀に聞かされた状況は
全て、その殆どをジェイが処理してくれたという事実だった
どうやら記事の内容はガゼであることがマスコミには理解されたらしく
写真の状況からも、信憑性が無いと判断されて
ネットでは俺のファンの一部が写真を公開した雑誌記者に激しい批判と苦情が殺到し
TVでもすこしだけ騒ぎになっていたらしい

TVも付けず、ラジオも動かしていなかった俺がそんな状況を知らなくて
とりあえず丸く収まったらしいことに安堵のため息をついていた



「ところで・・・聞くのもヤボかと思うけど・・・今まで何してたのさ」

「・・・何って?」

「いや、何だよ何」



と、意味深な会話の後に躊躇いがちに指差された先には俺の胸元
そこにはキスマークが散らばってて、そこで俺は「あー」とだるそうに答えて
鷹士とのいざこざで少しばかり投げやりだった所為か、俺は隠す事無く雅紀に告げる



「乱交」

「また・・・そんなぶっちゃけていいの?」

「いーのいーの、どーでもいーの」

「なんかスゲー投げやりになってない?
鷹士さんとなんかあっ・・・」



乱交、とはまた言いすぎだが気分的にそうだったのだ
その単語について誰と、とは言わないが目の前の男なら凡そ察しはついていることだろう
雅紀は言いかけて俺と目が合った瞬間に黙り込む



「・・・目が凄い怖いんだけど」



顔が綺麗なだけに、と世辞まで寄こしてくる雅紀
それを無視して一言



「鷹士って誰だっけ」



無表情で告げたソレに全てを悟ったらしい雅紀は
話にノるように「ああ、俺の勘違いかな」とその場を治めると
夜にまた来る、と告げてその場を去ったのだ

その時俺の部屋の中にはケビンが居た
本当は明日の朝まで一緒に居るはずだったのだが
夜に雅紀が来ることを告げて身支度を整えて部屋に帰ってもらうことにして
軽く換気をすると雅紀が来るのを待った

四時間後、夜の10時頃に訪れた雅紀に遅い、と一言告げて
それから今まで他愛の無い談笑をしていたのだ
そして夜の11時半頃

控えめなノックがして今に至る



時間的に嫌な予感がしながらも雅紀との会話を一端切ると扉まで歩いて



「どちら様で?」

「・・・?あのな、話があるんだが・・・」

「どちら様で?」

「え?あ、やだなぁ、兄ちゃんだよ」

「俺に兄なんて居ません」



そう告げて話は終わったとばかりに踵を返して雅紀の元に戻ろうとすれば
慌てた声が扉の向こうから発せられる
大きな声に雅紀も気がついたのか、明らかに苦笑いになっている



!実はそのことについて話をしに来たんだ!
お願いだから開けてくれないか!?兄ちゃんにもう一度チャンスをくれないか!?」



「・・・、俺帰ろうか?」



座っていた雅紀も空気を察して腰を上げようとして
それを即座に制する



「ああ、別に居ていいよ
直に追い返すから」



扉の向こうにも聞こえる声量で告げて
「容赦なしだね」と小さく呟く雅紀を尻目に扉を開くと
「追い返す」発言を効いていたらしい鷹士は既に情けない顔をして目の前に立っていた



「・・・チェンジ」



ボソリとそれだけを告げて
無情に、そのまま開いた扉を閉めようとして
すぐさま鷹士の足と手が部屋に不法侵入する



「だぁぁああ!待ってくれってば!ちょっと話があるだけだから!」



必死な鷹士は半ば強引に部屋に入ってきて
部屋の奥に居た雅紀を視界に捉えて動きを止める
雅紀はというと「チェンジって・・・」と1人突っ込みつつ含み笑いで肩を震わせていた
テレクラとかで呼んだ女の子を取り替えるようなやり取りがツボに来たらしい

俺はそんなことどうでも良いのだが

そんなこんなで結局俺と鷹士と雅紀の三人でローテーブルを囲んで
俺は長居をしてもらうつもりなど毛頭無い為にすぐさま本題を切り出した



「で、何」

「あ・・・っと、その・・・」



無表情で聞く俺を他所にチラチラと雅紀に視線を向ける鷹士
どうやら第三者が居るとし辛い話らしいのだが、雅紀もソレがわかっているらしく
「もう虐めてやるなよ」というような鷹士への同情を含んだ視線で俺に訴えかけてくる
中々話を始めない鷹士に痺れを切らした俺は追い出すつもりで雅紀と会話を始める



「雅紀、さっさと続きやろうよ」

「へ?続きって・・・」



突然の俺の切り出しに驚く雅紀を引き寄せてこっそり耳打ち



(さっさとコレ追い出したいんだよ!
協力してくれたら明日から三日間購買奢る!)

(・・・のった!)












コレ呼ばわりとはかなり仲違いをしたのか、と考える雅紀
の提案に乗ってきた雅紀もそれを承諾する
それに彼に好意を寄せている雅紀にとってもオイシイ状況であることには代わりは無い

キス位はOKなんだろうか、と思い

あろうことかの兄である鷹士の目の前で試しにとばかりに唇を寄せれば
僅かに戸惑ったは腹をくくったのかそれに応じるように自ら唇に触れてきた
(・・・こんなことする位鷹士さんが嫌いになったのかな)
これはヘタをするとただでは済まない状況になるのではないだろうか
そう思いながらも触れるだけのキスにあからさまにちゅっと水音を立てて鷹士さんに向き直る



「あのさ、大した話じゃないなら明日以降にしてもらえるかな
この通り俺忙しいから」



俺から唇を離したはそれ以上を進める事無く
肩口に顔を埋めたまま、鷹士さんを見る事無く告げる

そこであることに気がついた

普通仲違いしていて、しかも喧嘩中であれば
普通はここで相手を睨みつけるものではないだろうか
それをはしようとしないのだ
僅かに眉を顰めて、ふと鷹士さんに視線を向ければ



「・・・!」



(・・・ちょっ・・・これ、マジにやばいって)
反射的に腰が引けてしまうほど今の鷹士さんの表情は尋常ではなかった
完全に怒気を含んだ表情で、しかも俺を射抜くかの如く睨みつけているのだ

何時か遭遇したような修羅場とは比べ物にならないほどに桁違いの緊張感と空気

これは自分にも危害が及ぶかもしれないと思った瞬間
鷹士さんが机を挟んで立ち上がって抱き合っている俺たちの目の前に立った
彼の雰囲気から何も言い出せずに居ると今まで顔を伏せていた
鷹士さんの動く気配に気が付いたのかゆっくりと顔を上げた

そこでやっと、目の前に立っている鷹士さんに気がついたのだ
驚きに表情を固まらせるはそれでも態度で示そうとしたのか
俺に抱きつく腕の力を強めて、ここで初めて鷹士をキっと睨み付けた

しかし

既にその睨みつける目は潤んでいて

簡単に言えば半泣き状態だったのだ

突然のの表情の変化に驚いてに目を奪われていると
目の前に立っていた鷹士さんが静かに声を上げる



「華原・・・悪いけど二人で話がしたい
今日のところは・・・帰ってくれないか・・・?」



その呼びかけに鷹士さんを見上げると
先程までの怒気はドコへやら、鷹士さんまでどこか思いつめた表情でを見下ろしている
これはもう二人に話をさせないと丸く収まらない、と判断した俺は
抱きつくの手をやんわりと解いて、少しばかり名残惜しいが、そのまま部屋を後にした

静かに扉を閉めて
そこで話の流れからハタリと気がつく



「もしかして俺って・・・」



当て馬・・・?



これは三日購買ご馳走だけじゃおさまらない、と思い直して
つい無意識に、今し方閉めた扉を睨みつけていた